はぴの本棚

2003年からの読書日記

ムーミン谷の夏まつり (新装版) (講談社青い鳥文庫)作者: トーベ・ヤンソン,下村隆一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/12/13メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る

平和な6月のムーミン谷に大洪水がおしよせる。
ムーミン一家は、大水をのがれて、流れる一軒の家にうつる。そこは劇場だったので、一家はすばらしい劇をすることになって……。


大洪水に巻き込まれたムーミン谷の物語。
ちょうどこの本を読み終わった後に広島の大雨被害があったりして、直接関係ないとはいえ複雑な気持ちになりました。
大学時代に暮らしていた場所の近くが被害にあっていたり、胸が痛みます。


刊行順に読もうと思っていたけれど、今回は関係なく夏のタイトルに惹かれてこの時期に読みました。
そのせいかミイの姉のミムラ、ホムサとミーサ、エンマ、フィリフヨンカ、ヘムルなど初めて登場する人物もたくさん。

印象に残ったのはエンマ。
最初は意地悪で不気味な印象だったのに、後半はけっこういい人?
劇場を愛している気持ちが伝わってきました。


ニョロニョロは種から生まれる(夏まつりのイブにまかなければならない)というのもびっくりだったし、いつも落ち着いているスナフキンが24人の子ども達の親代わりになり、てんてこまいだったのも意外な一面を見られた気がして面白かったです。


スナフキンのこの言葉も印象に残りました。

>「そうかい。たいせつなのは、自分のしたいことを、自分で知ってるってことだよ。」


巻末エッセイの乙武洋匡さんも書いていましたが、ムーミンの物語は落語と似ていて、ダメな人ばっかり出てくるけれど、その部分がその人の愛すべきところで「いい」という文章にはとても共感しました。

暗くて悲観的な人、意地悪な人、怒りっぽい人、つい嫉妬してしまう人・・・ダメなところも全部ひっくるめてその人なんですよね。


ムーミンシリーズを3冊読みましたが、読む前のイメージと今では全く違ってしまいました。
ほのぼののんびりしている雰囲気を想像していたけれど、彗星が落ちてきたり、家がジャングルになってしまったり、今回は大洪水・・・
けっこう大変な出来事が多くてびっくり。
それでもどうにかこうにか乗り越えて行くムーミン達のしなやかな強さは見習いたいところです。