はぴの本棚

2003年からの読書日記

八月の光作者: 朽木祥出版社/メーカー: 偕成社発売日: 2012/06/21メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 24回この商品を含むブログを見る

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大好きな朽木祥さんの作品ですが、ヒロシマ原爆投下の物語ということでつい構えてしまう私がいました。
8月中に読もうと思っていたんですが、落ち着いてじっくりと考えているうちに日々は過ぎ・・・手に取るのに時間がかかってしまいました。
読んでからも感想を書くまでにずいぶんかかりました。


収録されているのは「雛の顔」「石の記憶」「水の緘黙」の三編。
少年少女が主人公です。


読み手は先(原爆投下)が分かっているから読み進めるのがこんなにも辛いんでしょうね。
フィクションであったらどんなにいいだろう。
でも、これは実際に起こったこと。
半世紀を過ぎた今でも後遺症で苦しんでいる人達や大切な人を一瞬で奪われた人達などがたくさんいるんだと思うとやっぱり重く苦しい読書でした。
そして去年の東日本大震災で起こった福島原発事故も・・・


物語はもちろん、あとがきも心に響きました。


想像してはいましたが、物語に登場するほとんどの人びとには実在のモデルがあるとのこと。
私は広島に大学時代に住んでいたこともあり、原爆資料館でだったか忘れましたが、影になった人の話を聞いて印象に残っていました。
「石の記憶」と重ねながら読みました。


>二十万の死があれば二十万の物語があり、残された人びとにはそれ以上の物語がある。
この本に書いたのは、そのうちのたった三つの物語にすぎない。
 だが、物語のなかの少年少女たちは過去の亡霊ではない。
未来のあなたでもあり、私でもある。


そう。
他人事でなく「未来の私かもしれない」と読みながら感じたからこんなに苦しくてしんどいんだ。


こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』『この世界の片隅に』もそうですが、一度読んだだけでは足りない気がします。
落ち着いて何度も読み返し、冷静に。
本当にあったことだと記憶しておかなければいけない!と強く感じました。
そしてそれを次に世代にも少しでも伝えていくことができたらと思います。