はぴの本棚

2003年からの読書日記

秘密の花園作者: バーネット,グラハムラスト,Frances Hodgson Burnett,Graham Rust,野沢佳織出版社/メーカー: 西村書店発売日: 2006/12/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 34回この商品を含むブログ (9件) を見る

梨木香歩さんの『秘密の花園ノート』を購入しているので予習のため読みました。
梨木さんが本の中で紹介しているのは岩波少年文庫だったけれど、挿絵がたくさん入っているこちらに惹かれました。
子どもの頃読んだと思い込んでいたけれど未読だったかも。


両親を病気で亡くしインドから叔父クレイヴン氏のお屋敷にやって来たメアリ。
最初は病弱で怒りっぽく、つむじまがりでかわいげのない少女でした。
でもそれはメアリのせいというより両親にかまってもらえず、寂しかったのが大きな原因でもちろんインドの気候のせいもあったんでしょう。


>「わたしはだれも好きにならないし、だれからも好かれないんだわ」

と思っていたメアリでしたが、豊かな自然の空気を吸い体を動かして遊んだり、秘密の花園を見つけて夢中になったことで少しずつ変わっていきます。
お屋敷で働くメイドのマーサやその弟のディコン、庭師のベンなど周りの人々の影響を受け自分を見つめることができたこともよかった!
挿絵のメアリの姿が痩せて病弱な様子からふっくらした薔薇色の頬にキラキラ輝く目をした子どもらしい表情に変わっていくのも読んでいてうれしくなりました。


またクレイヴン氏の息子コリンがメアリやディコンと出会い、自分から「生きたい」と願い変わっていく様子は感動的でした。
メアリとコリンの変化は秘密の花園のよみがえる様子と重なるようです。


コリンが行なった科学的実験は大成功!

>人の思いや考えには電気にも負けないほどの力があり、太陽の光と同じくらい役立つこともあれば、毒薬なみに害をもたらすこともある

楽しい気持ちや明るく考えることがいかに大切なのかが分かります。
私は大人になってから分かったけれど、言葉や思いを明るくしておくよう心がけるだけでもずいぶん違うんですよね。
10歳でそれを発見し、自分の体で証明してみせたコリンは本当にすごい。



コリンの父のクレイヴン氏は10年もの長い間妻を失った悲しみで心を病み、屋敷にはたまに戻るくらいで放浪の旅をしていました。
痛々しかったけれど、息子を使用人に任せっきりにして放っておいたのはコリンにとってかなり不幸だったと思います。
メアリとディコン、もちろんコリン自身の頑張りもあり元気になりましたが、一つ間違えば手遅れになったかもしれません。
素晴らしい結末だったけれど、親子のやり直しの正念場はコリンが思春期に入る物語に書かれていないこれからだと思います。
今度こそクレイヴン氏には逃げないで欲しい。



マーサとディコンのお母さん(スーザン・サワビィ)は大好きになりました。
12人の子どもを育てているのがまずびっくりですが、さらに村の皆から一目置かれている存在。
マーサやディコンの話でたびたび登場するのですが(子ども達と実際に会うのはかなり後半)エピソード一つひとつがとても素敵です。



ディコンが秘密にしていることがある(もちろん秘密の花園のこと)けれど、悪いことではないので秘密にしていてもいいか尋ねる場面では、
>『かまやしないよ。秘密なら好きなだけお持ち。あたしゃおまえのことなら、十二年分も知ってるんだから』

は、子どもを信頼しきってないと出てこない言葉だと思います。



マーサが母が言っていたことをメアリに語る場面も印象に残っています。
>子どもにとっていちばんの不幸は、なにひとつ思いどおりにならないことと、なにもかも思い通りになることだって。


同じ母親として見習いたい部分やハッとする言葉がいくつもありました。
早速私が勝手にランキングしている理想の母親ベスト(笑)の中に仲間入りです。
ちなみにベストに入っているのは『ツバメ号とアマゾン号』に登場する子ども達の母です。


あぁ、子どもの頃にこの物語を読みたかった。
本棚に加えたい作品がまた増えました。
きっとそういう物語がまだまだたくさんあるんでしょうね。


『小公子』『小公女』を書いたのもバーネットだと知りました。
アニメを見た記憶はあるのであらすじはうっすら分かるんですが、原作は未読。
じっくり読んでみたいと思いました。