はぴの本棚

2003年からの読書日記

さいはての島へ―ゲド戦記 3作者: アーシュラ・K.ル・グウィン,ゲイル・ギャラティ,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1977/08/30メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (81件) を見る

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前巻からまた長い時代を経てゲドは大賢人となって登場します。
エレス・アクベの腕輪がつながってからずっと平和が続いてきたアースシーですが、ついに変化が訪れ悪い知らせがあちこちからもたらされるようになります。
他の地と同様、災いの兆しを伝えに父エンラッド公の命を受けローク島にやって来たアレン王子でしたが、ゲドに一目会うなり敬愛の情を抱くようになりすっかり魅了されてしまいます。
ゲドについて災いの源を探す旅に出たアレン王子の物語です。



前2巻はけっこうすらすら読めましたが、この巻は手強かった!
災いを探しに島を渡り歩く暗く果てしない旅・・・という印象なのもあったのでしょうが、読むのにかなり時間がかかりました。
読みにくいというのではないんですが、考えさせられる部分が多くて息切れしてしまったように思います。

私は両者のちょうど中間くらいの年齢なので、どちらの立場も想像しつつ読むことができました。
アレンの若さやまっすぐでひたむきなところはまぶしかったし、ゲドの老練さや落ち着きも素敵でした。
また、旅をする中でアレンとゲドの立場が少しずつ変化していくのも興味深かったです。
最初はゲドを尊敬や憧れの対象として眺めていたアレンでしたが、後半はゲドのことを理解し、支えようとする力強い活躍が増えてきます。
立場が逆転するというのではないんですが、アレンのたくましい成長が見られてよかったです。



今回は生と死についても色々な角度から考えさせられる内容でした。
でもまだ今の私には難しい部分が多かったです。
読んでいてなんとなく伝わってくるけれど、しっくりこないのが悔しくて・・・
私自身がもっと年齢を重ね人生を味わい、再読を重ねていかなければ分からないのかもしれません。
手もとにおいて置きたい気持ちがますます強くなってきました。



印象に残ったゲドの言葉を抜粋しておこうと思います。
未読の人は読まないで楽しみに取っておいた方がいいかも。






>「過去を否定することは、未来も否定することだ。」


>「しかし、ただ生きたいと思うだけではなくて、さらにその上に別の力、たとえば、限りない富だとか、絶対の安全だとか、不死だとか、そういうものを求めるようになったら、その時、人間の願望は欲望に変わるのだ。そして、もしも知識がその欲望と手を結んだら、その時こそ、邪なるものが立ち上がる。そうなると、この世の均衡はゆるぎ、破滅へと大きく傾いていくのだ。」


>「死と生とは同じひとつのもの。手の両面、手のひらと手の甲みたいなものなんだ。同じひとつのものだけれど、それでもやっぱり、手の甲と手のひらは同じじゃない。・・・・・・切り離すこともできないが、かと言って、いっしょくたにすることもできないものだ。」


>「死を拒絶することは生をも拒絶することになる。」


>「ただ、わしらだけは幸いなことに、自分たちがいつか必ず死ぬということを知っておる。これは人間が天から授かった大変な贈り物だ。」


>「いいか、アレン、この世ではふたつのもの、相対立するふたつのものがひとつのものを作りあげているのだ。万物と影、光と闇。天の両極。そして、生は死から、死は生から生まれている。相対立しながら、両者はたがいを求め、たがいに生を与え合い、永遠によみがえりを続けていく。すべてがそうだ。〜生きてこそ死があり、死んでこそ、よみがえりもある。となると、死の訪れない生とは、いったいなんだ?どこまでも変わることなく、永遠に続く生とは?死をほかにして何がある?よみがえりのない死をほかにして・・・・・・。」


>「本当に力といえるもので、持つに値するものは、たったひとつしかないことが。それは、何かを獲得する力ではなくて、受け入れる力だ。」


>「生命あるからだなら苦痛もきっと味わうものよ。命があってこそ、からだは老いて、死んでいく。死はわしらが己の生命に、生きてきたその生すべてに支払う代価なのさ。」


ゲド戦記、う〜ん深いです。