はぴの本棚

2003年からの読書日記

影との戦い―ゲド戦記 1作者: アーシュラ・K.ル・グウィン,ルース・ロビンス,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1976/09/24メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 74回この商品を含むブログ (135件) を見る

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今年読みたいと目標にしていたシリーズです。
年末近くになってやっと手に取ることができました。
実は5年ほど前一度読み始めたことがあったんですが、暗いトーンで進む物語に馴染めないまま途中断念していて今回もそうだったらと少し不安でした。
でも、ここ数年でファンタジー本もかなり読んだので慣れたのか?スラスラ読めてホッとしました。
邦訳されたのが私の生まれた年と近く、改めて長い間読み継がれているファンタジー作品なんだと思いました。


自尊心が強い若者ゲドが主人公です。
ゲドは魔法使いになれる素質を見込まれ、ローク島の学院で修行を始めます。
しかし、ゲドは魔法使いの能力は高くても傲慢な面があり、ある時驕りや妬みの心から不気味な影を呼び出してしまいます。
影はそれ以来ずっとゲドを苦しめ続け、逃げても逃げても追いかけてくる存在になってしまいました。
ゲドと影との対決にどう決着がつくのか興味深く読みました。


自分が生み出した影の存在・・・
これはひょっとしたら誰にでもある、目を背けたくなるような自分の負の部分なのかもしれません。
普段は忘れていたり見ないようにしている影の部分と向き合うのは実際行うとなると難しいことだと思います。
でも、影である自分の負の部分に向き合い受け入れる気持ちになれないと、これまでの自分を乗り越えることはできないんでしょうね。
ゲドが影との戦いで少しずつ変わっていき、成長していく姿がいいです。
彼の最初の師匠オジオンと友人のカラスノエンドウの存在もとてもよかったです。


物語の途中で何度か出てきた「均衡」という言葉には考えさせられました。
魔法使いと聞くと、何でもできて不可能なことはない存在だとつい思ってしまいがちな私ですが、魔法を使うことは少しだとしても宇宙の均衡を変えることであり、危険で恐ろしいことであるというのにはハッとさせられました。
便利であるという面だけを見ているのはいけない、行動を起こす前によく考えること・・・これは他にも通じるすごく大切なことだと思いました。


ゲド戦記、最初の巻を読んだだけなのにすごく魅力的な部分を感じました。
哲学的なところといったらいいのかな?引き込まれる言葉がたくさんあるんです。
もちろん普通にファンタジーとしても楽しめますが、登場人物達が語る言葉のあちこちに考えさせられました。
今は図書館で借りて読んでいますが、最後まで読んで気に入ったら購入も考えてみたいなと思っている気の早い私です。

第二部も楽しみに読みたいです。