はぴの本棚

2003年からの読書日記

こわれた腕環―ゲド戦記 2作者: アーシュラ・K.ル・グウィン,ゲイル・ギャラティ,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1976/12/10メディア: 単行本 クリック: 19回この商品を含むブログ (66件) を見る

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影との戦い』から数年後、今回はゲドも登場しますがちょっと脇役っぽい感じ。
主人公は初めて登場する少女テナーだと思います。

彼女は5歳の時、大巫女の生まれ変わりとしてアチュアンの墓所に連れてこられます。
そこは名なき者たち(闇の力)が支配する世界。
自分の本当の名前を名なき者たちに返され、アルハとして暮らすことになった少女はアチュアンで過ごしているうちに本当の名前も忘れ、大巫女としての自分が当たり前の生活になっていきます。

ある時、墓所に何者かが忍び込んできたのを発見したアルハは彼(ゲド)を地下に閉じ込めることに成功します。
侵入者は殺して名なき者たちの生贄として捧げられるのが本来なのですが、なぜかゲドにはそれをためらわせるものがありました。

ゲドはアチュアンにあると言われる魔法の腕環の半分を探しに来ていたのでした。
前巻でちらりと登場した壊れた腕環。この巻でその秘密が詳しく分かります。


大巫女が死んだその日の夜に生まれた女の子というだけで、運命が変わってしまうなんて・・・
貧しくても普通の少女として家族と過ごしていた生活が奪われるのはとてもかわいそうでした。
特に残された母親の気持ちを考えるとやりきれない思いでした。
連れて行かれる時、娘を天然痘にかかっていると偽って巫女達を騙そうとした母親。
娘を連れて行かれたくない、そばに置きたい、という気持ちは想像できる気がします。

アチュアンの墓所に連れてこられたのが5歳なので、幼い頃の記憶もなくなってしまい、自分の居場所はこの闇と静寂の世界だと思っていたアルハ。
ゲドと出会い、選択を迫られることになります。
アルハとしてこのまま馴染んだ闇の世界に留まるか、本来の名前テナーとして新しい世界に出て行くか。
数々の葛藤を経て彼女が自分で選んだ答えは本当によかったと思いました。

自分で選ぶことの大切さ、自由の重さなど今回も考えさせられる言葉がたくさんありました。
影との戦い』よりだいぶ成長したゲドと出会えたのもうれしかったです。


舞台がアチュアンの墓所という名なき者たちが支配する世界ということもあり、1巻とはまた違う暗く重苦しい雰囲気がありました。
見返しに地図があるんですが、神殿や地下迷宮、大巫女の館など古代文明の雰囲気があってわくわくしました。
あとがきにはマヤやクレタ島を思わせると書いてありました。


テナーのその後が気になるところです。
次巻がますます楽しみになってきました。