はぴの本棚

2003年からの読書日記

緑の模様画 (福音館創作童話シリーズ)作者: 高楼方子,平澤朋子出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 2007/07/15メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブログ (25件) を見る

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三つ葉のクローバーのように心を結び合う、まゆ子・アミ・テト。三人の前に繰り返し現れる茶色い瞳の青年はだれ?白髪の老人がじっとそそいでくるまなざしの意味は?かつて若者が身を投げた塔の窓に映る謎の影、寮母が語る遠い日の心ときめく思い出。女の子たちが出会ういくつもの物語の網目には、ちいさな危機もひそんでいた・・・・・・。


高楼さんの作品でまた一つお気に入りができました。
まず表紙が素敵です。
三人の少女が誰なのか想像しながら読み始めました。
読み進めて行くうちに物語に登場する場面や場所が表紙と裏表紙に載っているのを確認、読みながら時々眺めて楽しみました。
章は終章まであるんですが、その扉のイラストの植物がだんだん生長していくのも途中で気づきました。
章を細かく分けている番号の数字も飾られているんですが、その飾りが少しずつ違っているのも凝っているなと思いました。


ふとしたきっかけから最後の一ヶ月ほど学校へ行けないまま、小学校の卒業式を迎えたまゆ子。
母に頼まれ、女子校で舎監をしている母の友人のところへ届け物をする場面から物語が始まります。
母の友人の娘のテト、女子校の寮で暮らすアミと出会い、まゆ子は少しずつ元気を取り戻していきます。

三人を結びつけたのは『小公女』。
物語のあちこちで重要な役割を果たしています。

『小公女』はテレビアニメをちらっと見たくらいでほとんど覚えていないのが残念。
主人公のセーラがかわいそうという印象しかなく、あまり見なかったように思います。
きっと見落としている部分がたくさんありそう。
大人になった今改めて読んでみたくなりました。

『小公女』をきっかけにしてまゆ子、アミ、テトの三人が深まっていくのもよかったし、
茶色い瞳の青年と老人のつながりや塔にまつわる悲しい話など、謎がどうつながるのか気になって読み進めました。
少女達が主体の章がほとんどなんですが、第三章だけは老人が語り手なのが印象的です。
文字の色も違っているので自然と老人の目線になって物語に入ることができました。
舎監の根津さん、寮母の森さん、謎の老人・・・高楼さんの物語では大人達も魅力的です。


早春から初夏への季節の変化、これは少女達が小学生から中学生になる変化になんとなく重なるように思います。
少女達の友情が育まれていく過程で危機もありますが、それを乗り越えたのはホッとしました。
女の子の三人組の関係ってけっこう難しかったりしますから(笑)

クローバーが茂る秘密の場所にシャムロックと名づけ、お祈りする場面(最後にシャムシャムと唱える)ではかわいいやらおかしいやらで笑ってしまいました。


高楼さんの物語を読むと自分の中の少女が目を覚ます気がします。
大人になったといっても少女時代の懐かしい思い出はまだずっと心の奥にあるんですよね。
仲間達だけの秘密の場所、不思議な出来事、ちょっと恐ろしい思い、たわいないおしゃべり・・・
思い出は少しずつ違ってもどこかしら共通した気持ちを皆持っているんだと思います。
男性が主人公で素敵な物語もたくさんありますが、自分が女性でこの物語に共感できることがとてもうれしく本を閉じました。