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2003年からの読書日記

えんの松原 (福音館創作童話シリーズ)作者: 伊藤遊,太田大八出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 2001/05/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 19回この商品を含むブログ (10件) を見る

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本プロで時々UPされていてずっと気になっていた伊藤遊さん。
初めてこの人の作品を読みましたが、すごくよかったです。

物語は藤原氏が勢力を伸ばしていた平安時代が舞台。
現代と大きく違っているのは怨霊の存在が信じられていたこと。
色々な災害や災難、人の病気や死には怨霊がかかわっているとされていました。

主人公の乙羽は事情があり、男というのを隠して女童として宮中で仕えています。
彼を預かってくれている伴内侍はとても厳しくて凛とした老女です。
でも、実は乙羽のことを心配して気遣ってくれていたりします。

乙羽はある時、東宮の憲平と知り合い親しくなりますが、憲平は怨霊にとり憑かれているとの噂がありました。
その怨霊は死んだ元方だと言われていましたが・・・

怨霊の棲みかとされるえんの松原がなんとも不気味で読みながらドキドキしましたが、とても面白かったです。

乙羽のまっすぐな気性がとても好きでした。
>「あいつが死ぬのを、ただ待つのはいやだ。何もしないで負けるのはいやなんだ。」

無念を抱いて死んでいったものが怨霊になるという考え方は、裏を返せば悲しい思いをして死んだ人に対する同情も感じられます。

最初は両親を殺した怨霊を憎んでいた乙羽。
でも気持ちが最後には変化して発した言葉が印象に残りました。

>「怨霊のいない世の中というのは、ほんとうにいい世の中なんだろうか」
「うまくやるやつがいて、そのあおりを食う者がいる。
そのしくみが変わらない限り、この世から怨霊がいなくなるとは思えない。
それなのに、怨霊がいなくなったとしたら・・・・・・、
それはいないのではなくて、だれにも見えなくなっただけじゃないか、という気がするんだ。
だれも怨霊のことなんか思い出しもしないし、いるとさえ思わない・・・・・・。
忘れてしまうんだ、悲しい思いをしたまま死んでしまった人間のことなんか。
それはもしかすると、今よりもずっと恐ろしい世の中なのかもしれないぞ」

乙羽に言わせると現代はそんな恐ろしい世の中なのかな?

また主人公達以外の登場人物もとても光っていました。
夏君(なつき)のスパッとした強い性格もよかったし、たくさんの女性と縁がある(笑)綾若もいいキャラクターでした。

すごくよかったので、伊藤遊さんの本を他にも読みたくなりました。

とてもよい児童書だけれど、実際手に取る子どもは少ないんじゃないかと気になります。
大人の私でさえ表紙が不気味というか怖い雰囲気だったので・・・
太田大八さんの絵は素敵でこの物語の雰囲気にぴったりだけれど私が子どもだったら、この表紙を見ても怖そうで手に取らないかも。
とってもいい物語なので、周りの人が「この本面白いよ」ってぜひ子どもにすすめてほしいと思いました。
私も娘が大きくなった時にすすめたい本になりました。

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ときわ姫 > トントンさんも気に入った様子なので、とても嬉しいです。嬉しい反面ちょっと辛いのは、これが初伊藤遊らしいこと。私は伊藤さんのものはこれが一番だと思うので、ここから入ると後で読むものに満足できなくなるんじゃないかと心配です。 (2005/02/24 15:30)
ぱせり > トントンさん、こんばんは。本当に登場人物たちが魅力的でした。音羽のまっすぐさ、気持ちよかったです。えんの松原でのクライマックスのシーン、忘れられません。
ときわ姫さんのレスを読み、ふふふと笑ってしまいました。このあとの伊藤さんの本、トントンさんはどのようにお感じになるのでしょうか。楽しみです♪ (2005/02/24 21:03)
ミワ > こんばんは!わたしもこの本ずっと気になっていました。本屋さんで見かけたとき、厚さと表紙にわたしも驚きました(笑)。でもトントンさんの感想を拝見してやっぱり読みたいと思います。すごく興味がわきました! (2005/02/24 22:46)
北原杏子 > トントンさんも読まれたのですね〜、私も皆さんと同じくこの作品が一番でした。次は「鬼の橋」その次が「ユウキ」くらいかなあ…最近、出た「つくも神」は物語的には物足りない部分も多かったけれど、全体の雰囲気とかは決して嫌いじゃなかったですよ。ベストとはいえないけれど佳品ではあるというふうに。トントンさんもいろいろ読んで楽しまれてくださいね。 (2005/02/25 00:16)
すもも > トントンさん、わたしは「鬼の橋」から読んだのですが、「えんの松原」は前作より、エンタテイメントな部分で楽しめました。表紙についてですが、わたしも同じことを感じました。絵的には、もちろんすばらしいのですが、児童書として見ると、もっとソフトなイメージでもよかったかな、とも思いました。 (2005/02/25 10:46)
nanao > 上手い具合に「鬼の橋」から借りられました。
でも、これ是非読んでみたい。 (2005/02/25 19:43)
トントン > レスがいっぱいでびっくりしました!この本はすごく好評なんですね。
ときわ姫さん、はい、これが初伊藤遊さんでした。ときわ姫さんのベスト1なんですね。すごくよかったので他の作品も期待してしまいますが、ちょっとこの感動が落ち着いてから読んでみようと思います。

ぱせりさん、クライマックスのシーンよかったですね。映像が頭に浮かぶようでした。次読む伊藤さんの作品現代ものにしようか「鬼の橋」にしようか迷っているところです。

ミワさん、表紙はちょっと不気味ですが怖がりの私でも大丈夫でしたよ。厚さもなんのその!きっと楽しめると思います。ミワさんの感想も楽しみにしてますね。

北原杏子さんもこの作品が一番だったんですね。実は「つくも神」の皆さんの感想を拝見して伊藤さんに興味を持ったんですよ。他の作品も読むのが楽しみです。

すももさんは「鬼の橋」からだったんですね。表紙、同じように思ってくれる方がいて私だけじゃなかったんだ・・・と安心しました。子どもが手に取りやすい感じではないですよね。とてもいい児童書だからちょっと残念。

nanaoさんは「鬼の橋」からですね。感想楽しみにしてます。これはとてもよかったですよ。でも期待が大きすぎてもいけないので(笑)落ち着いて読んでみてくださいね。みなさんの評価が高いのもうなづけると思います。 (2005/02/25 23:06)
ケイ > こんにちは。この本、いいですよね。私もすごく好きです。少年達の心の動きが、、伊藤遊さん、これからも楽しみです。 (2005/02/27 15:57)
トントン > ケイさん、お忙しい中来てくださってうれしいです!伊藤遊さんの本と出会うことができて本当によかったって思います。これからどんどん読みたいです♪ (2005/02/27 23:16)