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2003年からの読書日記

光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島作者: 朽木祥出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/10/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る

真夏の夜、元安川に、人々は色とりどりの灯籠を流す。
光を揺らしながら、遠い海へと流れていく――。
68年前の8月6日。
広島上空で原子爆弾が炸裂した。
そこに暮らしていた人々は、人類が経験したことのない光、熱線、爆風、そして放射能にさらされた。
ひとりひとりの人生。
ひとりひとりの物語。
そのすべてが、一瞬にして消えてしまった。
昨年、原爆をテーマに研ぎ澄まされた筆致で『八月の光』を世に問うた朽木祥が、今回、長編で原爆を描ききる。
日本児童文学者協会新人賞をはじめ、産経児童出版文化賞大賞など多数の賞に輝く朽木祥が、渾身の力で、祈りをこめて描く代表作!


数年前から、夏には必ず戦争を扱った作品を読もうと思い少しずつ実行しています。
私にとって読むのがしんどくかなりヨイショがいる読書ですが、平和について考える機会を持つことは大切なこと。
これからも続けていきたいです。
今年は朽木祥さんの『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』にしました。

一昨年は同じ朽木さんの『八月の光
http://d.hatena.ne.jp/lovelyplace923/20121010


早くに読み終わっていたのですが、思うことが多すぎてまとまらず感想になかなか取りかかれませんでした。
強く心に残る作品に限って感想を書くまでに長く時間がかかる気がします。


広島は大学時代に住んでいたのでなじみのある地名も多くとても愛着があります。
その頃、平和記念資料館にも行きましたが、怖くてあまり直視できなかった記憶が・・・
焼け焦げたお弁当箱、制服など強烈な印象が残っています。
また訪れてみたいと思っていますが、あの頃と同じで怖い気持ちはずっと変わらないかもしれません。


広島で暮らしていた頃、原爆ドームの側を何度も通りましたが、爆弾を受ける前のことは考えたこともなかったし、産業奨励館だったことも知りませんでした。
ネットで過去の姿を調べたらとても美しい西洋風建築でびっくり!
チェコの建築家が設計した建物だったんですね。
それを知ってから改めて原爆ドームを見るとより一層、原爆の恐ろしさ、悲惨さを感じることができるような気がします。


物語は原爆投下後25年経った頃の広島。
主人公の希未は中学一年生です。
美術部の文化祭に向けて「あのころの廣島ヒロシマ:聞いてみよう、あなたの身近な人のあの日のこと」をテーマに活動を始めます。

12歳の希未は1970年頃の生まれ・・・ということは、私の年齢よりほんの少し上。
そのせいか遠い出来事ではなく、とても身近な感じがしました。


>「よう知っとると思うとることでも、ほんまは知らんことが多いよな」


これは本当にそうだと思います。
家族のこと、友達のこと、日本のこと、世界のこと・・・
大人になっても知らないことがたくさんあって、それは一生続くのかもしれません。


たくさんの人から話を聞いて当時の広島のことを知っていく希未達。
私も一緒に話を聞かせてもらっているようでした。


>「今日も明日も元気で帰ってくると信じとるけえ、きついことも言えるわけじゃ」


ここを読んだ時、一気に涙があふれました。
ちょっとしたことで娘達を強く叱ってしまった日だったのもあるけれど、(後で思うとそんなにきつく言わなくてもよかったと反省)叱ることができるのも生きていればこそ、平和あってこそなんですよね。
それがとても強く実感できました。


小山ひとみさんの短歌も印象に残りました。
当時、小山ひとみさんのような思いをした人達が数多くいたはず。


体は助かっても心が死んでしまったという言葉が出てきますが、私には想像できない辛さです。



>「生かされたなら、生きんといけん。どんとに(どんなに)つろうても、お迎えが来るまでは生きんといけんのじゃ」

それでも、生かされた命を大切に生き切りたいと強く思いました。



>どうか、あなたたちの世代が生きる世界が平和でありますように。自由な心を縛る愚かな思想が、二度と再びこの世界に紛れこみませんように。健やかに成長され、生を全うされますように。


堀田道子さんから届いた手紙の文章が心に響きます。
戦争を経験し、大切な人を亡くした多くの人達の平和への強い願いがぎゅっと詰まっている気がしました。
何度も読んで心に刻みたい言葉です。


平和な日本で元気に生きていることがどんなに幸せなことなのか・・・
忙しく日々を過ごしているとつい忘れがちになってしまうけれど、ふとした瞬間にでも感謝したいです。
こうやって本を読むことで平和への思いを強くできることにも感謝です。

将来、娘達もこの本を手に取ってもらえたらいいなと思います。
私も必ず再読したいです。