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2003年からの読書日記

上野千鶴子が聞く 小笠原先生、ひとりで家で死ねますか?作者: 上野千鶴子,小笠原文雄出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2013/02/20メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (4件) を見る

ベストセラー『おひとりさまの老後」』の上野千鶴子は、その後も取材と調査を重ね、多くのお年寄りが、「家族がいようがいまいが、家で死にたい!」と実は思っていることに確信をもつ。
住み慣れた自宅で、介護が必要な状態になったら、適切な医療・看護・介護の訪問サービスを利用し、末期になったらそのままそこで死ぬ=「在宅ひとり死」を実現するためには、どのような条件がそろえばよいのか? 
日本在宅ホスピス協会会長であり、がんの在宅看取り率95%の小笠原文雄医師に、上野千鶴子が67のきわめて具体的で役立つ質問をする。
訪問診療40年で得た小笠原医師の、家族や友人との関係、看取りのノウハウ、気になるお金の話、医療介護機関の探し方など、実践的テクニックを知ることができる。

母が図書館で借りていた本、「とてもよかった!」と薦められたので読んでみました。
自分にはまだ遠い話かなと思っていたけれど全然そんなことなかったです。
上野千鶴子さんの質問に対しての小笠原先生の答えがとても明確で分かりやすい。
在宅ひとり死は本人が希望するなら不幸でもなんでもないこと。
ためになる話ばかりだったし、勉強になりました。


自分で選べるとしたらがん死、という小笠原先生。
その理由として、亡くなるまでに一定の時間が残され、その時間を「別れの準備」に使える
なるほどと思いました。


がん告知の話もなるほどと思いました。

>告知をしないこと、つまり本人のためを思って「やさしい嘘」をつくことは、本当に残酷です。〜人は、自分に起きている現実がどんなものであれ、それを知り、受け止める以外に困難を乗り越える道はありません。


自分がもしがんになったらがん告知を受けたいと夫に話しました。
夫は逆で内緒にしていて欲しいそう。
ちょっと意外でした。
少し話をしただけですが、死について親しい人と話すのは案外難しいものだったりします。
でも、人は必ず死ぬんですよね・・・
だから元気なうちに自分の意思を伝えておくこと、それを叶えてくれる人間関係を今のうちから築いておくことがとても重要だと感じました。


抗がん剤治療を始めるか否かのインフォームドコンセントのための説明を受ける際の話も考えさせられるものでした。

>医師に「私のがんに抗がん剤治療をした場合、何%助かりますか」「5年生存率は何%ですか」と率直に質問することをおすすめします。

数字は使用の是非について判断する大きな目安になるし、的確に答える医師は信用していいと思うという答えはとても明確で参考になりました。


夜間セデーション、尿道留置カテーテルは初めて聞く言葉でしたが、在宅ホスピス緩和ケアを希望する時には選択することもあるかもしれないので覚えておこうと思いました。


親子、家族についてのことも難しい問題だと感じました。


>親子であっても、価値観や人生観はまったく異なることは珍しくありませんし、死についての考え方も違います。その場合、家族の自己満足のために本人に我慢をしてもらうのか、本人の意思を尊重するために家族はちょっと我慢するべきか?結論はおのずと決まってくるのではないでしょうか。


>結局は、自分の生き方・死に方を誰が選び、誰の選択を優先させるか、ということでしょう。


>万が一の時が心配だから施設や病院に入ってほしい、という考え方は、一見本人への思いやりから出ているようで、それを本人が望まないなら、結局は本人に「自分の気持ちはわかってはもらえない」という孤独感やむなしさを植え付けるだけです。


>どうぞ本人の意思を尊重してください。それがいちばんの親孝行なのです。


>元気なうちに、ぜひ自分の方からパートナーや子どもたち、信頼する友人などに延命治療についての自分の考えや希望を伝えておいてほしいと思います。緊急時になってからでは遅すぎます。


いざという時(医師から延命治療はどうしますか?と聞かれた時)は事前に延命治療は拒否するという意思を家族に伝えてあったとしても医師のすすめに従ってしまったという声をしばしば耳にするという話。
これも本当に難しい。


自分が家族の立場だったらきっと動転してしまうはず。
でも、どうしたいかを話し合っていた、かかりつけ医か訪問看護師、ケアマネージャーなどその場にいない第三者に電話をかけて自分の選択を肯定してもらい背中を押してもらうということを頭の隅に置いておくだけでも違うはず。
覚えておこうと思います。


認知症やがんの末期の患者に装着することが、はたして本人の幸福につながるのか。本人に我慢や苦しみをしいてまで「生きてもらう」選択を第三者が下すことが許されるのか。ひとりひとりが自分のこととして考え、国民全体の議論に高めていくことが求められています。


>そこそこの関係を保つには、精神的にも物理的にも適度な距離が必要であり、むしろ同居しない方がうまくいく場合が多いものです。


>医師の「万が一効くかもしれない」ということばや、患者側の期待とは裏腹に「ほとんど効かない。副作用はある」という意味なのです。


>「在宅緩和ケアで安らか・大らかは当たり前、さらに朗らかに生かされ、最期は在宅ホスピスで清らかに旅立ちたい」これが小笠原内科の理念です。



介護の不足分を補うためのお金(自費負担分)についても勉強になりました。

>お金はあればあるように、なければないように、在宅ひとり死は可能です。

という言葉が心強かったです。


日本在宅ホスピス協会のHPもお気に入りに入れました。
私も「希望死・満足死・納得死」ができるよう今から考えて準備していきたいと思いました。
少しずつ調べながら自分の意思をエンディングノートなど文書に記して伝えておきたいです。


最後にあったお二人の対談も興味深く読みました。
小笠原先生のような人達が今後たくさん育っていくのを楽しみにしたいです。


コラム「在宅ひとり死の心がまえ」「在宅ひとり死を見送る側の心がまえ」はノートに書き写しておこうと思います。