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2003年からの読書日記

県庁おもてなし課 (角川文庫)作者: 有川浩出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/04/05メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (68件) を見る

とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員・掛水は、地方振興企画の手始めに、人気作家に観光特使を依頼するが、しかし……!? 
お役所仕事と民間感覚の狭間で揺れる掛水の奮闘が始まった!


高知出身の有川さんだからこその愛に溢れた小説でした。
掛水くん&おもてなし課が成長していく姿がとてもよかった。
甘さは控えめ。

名刺の意味するもの、グルメだけでなくトイレが重要、適度な不便が売り・・・
私は県庁職員ではありませんが(笑)読みながら勉強になったり、共感したり、面白かったです。


>あるのが当たり前と思っていたらその価値を見失う。

これも本当にそう。
その地方で暮らしている人達には分からないというか気づかないよさってたくさんあると思います。
だから外からの視点だったり、お役所とは違う市民感覚が必要になってくるんでしょうね。
この小説や映画化の影響か?最近はお役所も少しずつ柔らかくなってきた印象があります。
県の観光サイトやゆるキャラにも力が入っている感じ。


高知へは何度か遊びに行ったことがありますが、主な観光地ばかりだったのでまだまだ楽しめそう。
日曜市と馬路村は機会があればゆっくり訪ねてみたい場所になりました。


高知県庁のHPでおもてなし課のページも覗いてみましたが、なかなか頑張ってますね(偉そうですみません)
「ない尽くし」キャッチコピーが本物だったとは。
パンフレットもどんどん進化しているよう。
小説と現実が絶妙な加減でリンクしているのもうまいなあと思わされました。


有川浩の高知案内』 有川 浩/案内 ダ・ヴィンチ編集部/編 も読んでみたくなりました。



今回文庫で読みましたが、2011年(東日本大震災直後)に単行本が出ていたことにハッとしました。

単行本で発生する印税を、重版分も含めて全て、震災復興のために寄付するとインターネット上で発表したことは記憶に残っていましたが、解説の吉田大助さんが引用されていた有川さんの発言を読むと改めて心に響きました。


>〜『県庁おもてなし課』を読むときに、「この一冊分の印税は被災地に届いてるんだ」と思っていただければと思います。こんな状況だからこそ、心置きなく物語を楽しんでいただければと思います。


自粛ムードになってしまいがちだった当時を思い出します。
でも有川さんのこの言葉で多くの人が気持ちよく本を購入し、読書を楽しめたのではないかと思いました。


もう一つ、吉田さんの解説で触れられていた「軽やかさ」については納得!
内容は決して軽くないのに、軽やかさが出せるのは著者の大きな魅力だと思います。



有川浩×金丸弘美×高知県庁おもてなし課との鼎談も読み応えがありました。


吉門さんは有川さんそのままじゃないですか!
『パンダ誘致論』を熱く語ったというお父様も素敵。
清遠のモデルになったというのも分かる気がしました。

日本全国レジャーランド化が実現すればいいな。
そのためには「おもてなしマインド」を一人ひとりが持つことが大切なんだと学ばせてもらいました。


有川作品は『図書館戦争』シリーズと『三匹のおっさん』だけしかまだ読めていませんが、外れなしの印象。
好きな作家はいても全作品を追いかけている人はこれまで一人もいないかも。
ここにきて有川さんの全作品を読みたい気持ちがむくむくと湧いてきました。