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2003年からの読書日記

光圀伝作者: 冲方丁出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/09/01メディア: 単行本 クリック: 76回この商品を含むブログ (79件) を見る

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何故この世に歴史が必要なのか。生涯を賭した「大日本史」の編纂という大事業。大切な者の命を奪ってまでも突き進まねばならなかった、孤高の虎・水戸光圀の生き様に迫る。『天地明察』に次いで放つ時代小説第二弾!


天地明察』が気に入ったので今回の時代小説も楽しみにしていました。
辞書ほどの分厚さ(笑)と恐ろしげな虎の表紙に圧倒されつつも返却期限に追われていたのもあり、751ページを一気読み。
まさに大作!焦りつつ読んだのがもったいなかったほどです。


最初、読み始めたのは母。
でも、冒頭からむごい描写が続いて苦手とのことですぐに断念してしまいました。
私はその話を聞き覚悟して読み始めたのでショックが少なかったのかも。
無事読み進むことができました。


物語は光圀7歳から始まり73歳で亡くなるまでが描かれています。
どこからが著者の創作なんだろう?と思いつつ・・・
テレビで見ていた穏やかな黄門様のイメージとは違う描かれ方が新鮮でした。


光圀はかなり熱い人だったんだろうなという印象を持ちました。
30歳からスタートした修史事業『大日本史』編纂が70歳までかかったというのは途方もなく長い道のりで想像もつきません。
でも、光圀のような人が熱さで皆を引っ張っていかないと成し遂げられなかったのかなとも思いました。


光圀以外にも魅力的な登場人物がたくさん。
兄の頼重、林読耕斎、紋太夫、泰姫、左近が特に印象に残りました。


天地明察』の安井算哲との会話が今回再現されていたのもうれしかったです。


43歳で父、母、妻、子など愛する者を次々に失う悲しみは読んでいてとても辛く感じ、涙が出ました。
明暦の大火での甚大な被害は東日本大震災に通じるものもありました。


ある人物を光圀がなぜ殺さなければならなかったのかについても最後にやっと分かり納得。
お互い信頼し合っていたはずなのに・・・彼は光圀よりもずいぶん先の未来を見ていたんですね。
すれ違う思いが切なかったです。


人生、色々なことがあるけれど、人の世はこの先も続く〜と年を重ねるごとに後世に託す思いが生まれてくるところに希望を感じました。


史書が人に何を与えてくれるのか?
〜人の生である。
連綿と続く、我々一人一人の、人生である。


史書=生きた証 なんですね。

著者が小説を書いて生きた証を残したいという強い思いや覚悟もこの言葉の中に含まれているような気がしました。
これからも心に響く小説を書き続けてほしいです。