はぴの本棚

2003年からの読書日記

七夜物語(上)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2012/05/18メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 18回この商品を含むブログ (32件) を見る七夜物語(下)作者: 川上弘美出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2012/05/18メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (27件) を見る

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川上弘美さんが書いた初の長編ファンタジーということで期待大で読みました。
酒井駒子さんの絵が物語の雰囲気にぴったりでした。


小学校四年生のさよは、母親と二人暮らし。離婚した父とは、以来、会っていない。
ある日、町の図書館で『七夜物語』という不思議な本にふれ、物語世界に導かれたかように、同級生の仄田くんと共に『七夜物語』の世界へと迷い込んでゆく。
大ネズミ・グリクレルとの出会い、眠りの誘惑、若かりし両親、うつくしいこどもたち、生まれたばかりのちびエンピツ、光と影との戦い……七つの夜をくぐりぬけた二人の冒険の行く先は?
著者初の長編ファンタジー


上下巻あり、けっこう分厚いので長い旅をした感じでした。
七夜物語のタイトル通り、読んでいる間はずっと夜の気配に囲まれているよう。

グリクレル、ちびエンピツ、ウバ達、うつくしいこどもたちと寒そうなこどもたち・・・
独特で魅力的なキャラクターがたくさん登場します。
不思議の国のアリス』や『はてしない物語』など児童書の色々な物語をあちこちで連想しました。


夜の世界の冒険を重ねるうちにさよと仄田くんがたくましく成長していく姿がよかったです。
でも、最後の冒険は二人が傷つく場面が続くので、読んでいて苦しかった・・・


結末はほっとしたけれどちょっと切なくも感じました。
子どもが主人公なので児童書のつもりで読んでいたけれど、大人を対象としている物語かもしれません。



印象に残った文章を挙げておきます。


>「ね、きれいだけだったり、いい子だけだったりするのって、つまらないでしょう。なんだか薄っぺらいでしょう。いいところも悪いところもまじりあってでこぼこしていて、いつそのいいところが出てくるか、いつ悪いところが出てくるか、わからないのがすてきでしょう」


>「そうだね。全部のことを理解できるなんて、思っちゃいけないんだ。理解できると思いこむところから、まちがいが始まるんだから」




人間は一筋縄ではいかなくて、複雑だからこそ面白く、それが魅力にもなるのだということ。


さよ達が旅した夜の世界のように、現実の世の中でも分からないこと、簡単に答えが出ないこと、理解できないことはたくさんあるということ。
でもそれでもいいんじゃないかということ。


そんなことを思いながら本を閉じました。