はぴの本棚

2003年からの読書日記

忘れられた花園 上作者: ケイト・モートン,青木純子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/02/19メディア: ハードカバー クリック: 52回この商品を含むブログ (115件) を見る忘れられた花園 下作者: ケイト・モートン,青木純子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2011/02/19メディア: ハードカバー クリック: 6回この商品を含むブログ (109件) を見る

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ずっと読みたいと思っていた作品。
美しい自然描写、物語の世界観にうっとり。
期待以上の面白さで最初から最後まで目が離せない展開でした。


祖母から英国コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した孫娘カサンドラは、祖母ネルの書き残したノートと謎めいた古いお伽噺集を手に英国に渡る。ネルはなぜ遠い地にコテージを買ったのか? ネルはいったい誰だったのか? 今はホテルとなった豪壮なブラックハースト荘、その敷地のはずれ、茨の迷路の先にあるコテージの手入れを進めるうちに、カサンドラは封印された庭園を見出す。そしてブラックハースト荘の秘密とは……? 


簡単に言うと、祖母のネルの過去を孫のカサンドラが探っていく物語。
でも、登場人物は多いし、時代が前後するだけでなく語り手や舞台となる国も次々変わるので複雑な構造になっています。
慣れるまではちょっと戸惑いますが、物語の世界に入り込めれば楽しめると思います。
世代がつながっていたり、時代が前後する物語って慣れてくるまでは混乱するけれど、はまると面白い。
登場人物の多くが何かを失っていて孤独を感じているところがリアルだと思いました。


特に印象に残ったのはイライザのパート。
物語を読み進めていくうちにイライザに対する自分の見方が変わっていき、最後はそうだったのかと思いました。
決して幸せとはいえない一生だったのかもしれないけれど、イライザの残した物語が未来の人達をつないでいったんですね。
コテージの手入れをするうちにカサンドラが元気になっていき心の傷が少しずつ癒されていくところもよかったです。
読者が登場人物達以上に真相を知っているというのもなんだかうれしい。



表紙の写真になんとなく見覚えがあると思ったら・・・桑原弘明さんのスコープ作品!
物語の雰囲気にぴったりでした。



秘密の花園』『トムは真夜中の庭で』など色々な作品のエキスが詰まっているのも楽しかったです。
未読の『抱擁』『レベッカ』『ステラの遺産』や著者の作品『リヴァトン館』もぜひ読みたいと思いました。