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2003年からの読書日記

抱擁、あるいはライスには塩を作者: 江國香織出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/11/05メディア: ハードカバー購入: 3人 クリック: 79回この商品を含むブログ (52件) を見る

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不思議なタイトルだと思いましたが、読み終わるとこれがまさにぴったりで・・・すごくよかった!


三世代にわたる「風変わりな一族」の物語
東京・神谷町の洋館に暮らす柳島家は、ロシア人の祖母、変わった教育方針、四人の子供のうち二人が父か母が違う…等の事情で周囲から浮いていた。
時代、場所、語り手を変え、幸福の危うさ、力強さを綴る。


三世代の家族の物語ってなんて魅力的なんでしょう!
世間一般から見ればたしかに風変わりな一族ですが、あらすじを読んだだけでは分からない部分がたくさんある素敵な物語でした。


時代が一番古いもので1960年、一番新しいので2006年。
家族から周辺の人物まで章ごとに語り手が変わるので最初は少し戸惑いました。
でも、それもすぐに慣れて物語に入り込めました。
美しいけれど切なさやはかない感じがある万華鏡のような感じと言えばいいのでしょうか?
色々な立場や方向から柳島家を見られるのがとても面白く夢中になってしまいました。



「みじめなニジンスキー」「かわいそうなアレクセイエフ」「ライスには塩を」
家族だけに分かる合言葉、いいなと思います。


装丁も素敵です。
途中で気づきましたが表紙の美しく整ったレース模様が裏表紙ではほころび崩れているんですよね。
時間の流れ、変化を感じずにはいられない。

家族の形はどんどん変わっていく。
失われていくもの、それでもなお変わらないもの・・・


一番印象的だったのは祖母絹の語り。
百合、桐之輔、光一、陸子の章も印象に残っています。
柳島家のことを知っていくうちにどの登場人物も愛おしく大切に思えるから不思議です。


5年にわたって雑誌連載された長編小説とのこと。
これまで読んだ江國作品の中で一番好きかも。
このままずっと読んでいたい思える小説に出会えたのは幸せなこと。
図書館で借りましたが、手もとに置いておきたい作品になりました。


江國さんの小説はなぜか好みのものと苦手なものがはっきり分かれます。
特に都会的でスタイリッシュな恋愛小説はこれまで避けてしまいがちでした。
あまりに自分とかけ離れている気がしてしまうんですよね。
今回の作品は恋愛の要素ももちろんあるけれど家族が中心の物語なのでとても好みでした。
違う意味で自分とはかけ離れている部分はあったんですが(笑)


苦手意識のあった恋愛小説も今読んだら印象が違ってくるのかも。
過去のも含めてこれから色々読んでいきたいと思っています。