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2003年からの読書日記

エルニーニョ (100周年書き下ろし)作者: 中島京子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/12/10メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (13件) を見る

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中島京子さんの作品を読むのは2作目。
『小さいおうち』とは雰囲気の全然違う物語だったけれど好みでした。


21歳の女子大生瑛は、恋人ニシムラの暴力から逃れてやってきた見知らぬ南の町で7歳の少年ニノと出会います。
ニノも灰色の男から逃げているとのこと。
二人は町や島を転々としながら一緒に逃避行を続けることになります。


舞台は九州の長崎周辺でしょうか?
傷ついた瑛を救ったのはニノであり、南の町のおおらかな気候やそこで出会ったたくさんの人々だったんでしょうね。
子守商店街の石松砂糖販売のおばあちゃん、一心のアキオさん、竜巻女史、鯨谷くん・・・皆素敵でした。



>人には、どうしたって逃げなくちゃならないときがある。
けれどそれは自分ではわからないものなの。
永遠にそこに留まるか、生きるのを諦めるかどちらかしか選択肢がないと思い込んでいる人には、くまさんが必要なのよ。


逃げると負けという風にとらえがちだけど、自分を守るために必要な時もある。
それにしても「森のくまさん」の歌ってよく考えてみると本当に不思議だと思いました。


物語の途中で挿入される短いお話が独特でなんとも魅力的でした。
子どもの頃読んだ思い出の本『モモ』もちらっと登場していてうれしかったです。


短い夏の間に少しずつタフさを身に付けた瑛、本当によかった。
結末もあたたかくてホッとしました。



瑛とニノのように出会いって偶然のようで必然なのかもしれませんね。

もちろんニシムラのような人との出会いもあるので怖い部分はありますが、自分が出会う人って意味があるのかなと思わされました。
人とのつながりが薄くなったと言われて久しいですが、まだまだ捨てたもんじゃないのかも。