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2003年からの読書日記

靴を売るシンデレラ (SUPER!YA)作者: ジョーン・バウアー,灰島かり出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/07/15メディア: 単行本 クリック: 24回この商品を含むブログ (8件) を見る

ずっと気になっていたジョーン・バウアー作品、とてもよかった!


主人公は高校生のジェナ・ボーラー。
靴店でアルバイトをしているジェナは靴を売る才能を老婦人の社長に見込まれます。
運転免許を取ったばかりなのに運転手に抜擢されてびっくり。
シカゴからテキサスへのドライブ旅行で一夏を過ごすことになります。


父親のアル中のせいで両親は離婚、大好きな祖母はアルツハイマー病が進んでいて老人ホーム。
決して恵まれている環境ではないけれど、めげずに一生懸命生きている姿がまぶしかったです。
自分の容姿も気になるお年頃、背が高すぎることがコンプレックスだったり、妹みたいに美人ならと思ったりする姿もとてもかわいい。


ジェナの仕事ぶりがとても素晴らしく、靴を売るのが好きという気持ちはもちろん自分の仕事に誇りを持っている様子が伝わってきました。
これは社長やカリスマセールスマンのハリー・ベンダーに関してもそうですね。
仕事は生活の糧(お金)を得ることがまず第一かもしれないけれど、それだけじゃないってこと。


この物語を読むと、仕事って大変そうだけどやりがいがあるものだと感じるのではないでしょうか?
靴を売る仕事について書かれていますが、接客業なら全てに関係すると思いました。


ハリーが教える商売に関する二つの黄金のルールもそう。

物(商品)より、人(お客)に関心を持つこと。
口を閉じるタイミングを、逃さないこと。


まだ働いていない若い人はもちろん、現在働いている大人達にもぜひ読んでもらって自分を振り返ってもらうのもいいかもしれません。



仕事に関することだけでなく、人生について考えさせられる文章もたくさんあり印象に残りました。


>「そんなにつらくない、なんてふりをするのは、よそうね。だって、すごくつらいもの。大丈夫、なんてふりもしない。だってちっとも、大丈夫じゃないんだもの。あたしたち、おたがいになんでも話すことにして、自分の気持ちを表に出そうよ。そうやっていくうちに、いつかもっと楽しく暮らせるようになるって、そう信じよう。ね、わかった?」


>人生の道路にも、だれかが標識を立ててくれればいいのに。


>「こう考えてみないか?人生には落とし穴があって、おまえさんは大きな穴にはまっている。でもね、健やかな暮らしと考え方の方へ、おまえさんの心と頭をしっかり向けておくんだ。そうしていれば、穴から抜け出す方法がきっと見えてくるはずだってね」


>「神様が人に仕事を下さったのは、それを通じて人間が成長するようにというお恵みなんだってね。〜」


>人生に立ちはだかる問題が、あたしたちを成長させたり壊したりするわけではない。その問題に立ち向かう術をどうやって学ぶか、それが人生を変えるのだ。



今回の経験で大きく成長したジェナ、目の前の問題はまだ解決したわけじゃないけれど明るいさわやかなラストでした。
彼女はこれからますます素敵な女性になるでしょう。


いつ王子様が登場するんだろう?と思いながら読み進めていきましたが、現代のシンデレラには王子様は必要なかったというのも面白かったし、主人公と著者の共通点も興味深かったです。

原題は交通規制だったそうですが、靴を売るシンデレラとつけた訳者の灰島かりさんのひらめきにはあっぱれ!
ぴったりはまっていると思いました。



ジョーン・バウアーさんは現在9作ほどヤングアダルト作品を書かれているとのこと。
でも日本語訳があるのは本書と『希望のいる町』のみなのが残念です。

「私は、困難に立ち向かう主人公を描くのが好きです。そのとき最高の武器になるのは、なんと言っても希望とユーモアでしょう」
と語る著者。

これからもっと多くの作品が翻訳されるよう願っています。