はぴの本棚

2003年からの読書日記

螺旋作者: サンティアーゴパハーレス,木村榮一出版社/メーカー: ヴィレッジブックス発売日: 2010/02/27メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 127回この商品を含むブログ (36件) を見る

600ページちょっとある長編だったので読むのに時間がかかりましたが、楽しめました。
スペインの作家を読んだのは初めてでしたが、職場環境や夫婦の関係、都会と田舎暮らしの落差など日本とも通じる部分がありすんなり入っていけました。


物語の中でたくさんの本のタイトルや作家が挙げられ、本好きの心をくすぐります。
未読のものはもちろん既読の作品も読み返してみたくなりました。



内容紹介より。

絶妙な語り口、緻密なプロット、感動のラスト。
大ベストセラー小説『螺旋』の作者トマス・マウドは、本名はもちろん住んでいる場所すら誰にも明かさない“謎”の作家。
「なんとしても彼を見つけ出せ!」出版社社長に命じられた編集者ダビッドは、その作家がいるとされる村に向かう。
一方、麻薬依存症の青年フランは、盗んだバッグに偶然入っていた『螺旋』をふと読み始めるのだが…。
いったいトマス・マウドとは何者なのか?
2つのストーリーが交錯する時、衝撃の事実が明らかになる!
驚異のストーリーテラーが放つ、一気読み必至の長編小説。



ダビッドの章と薬物依存のフランの章がどう重なるのか興味津々で読み進めました。
最初は『螺旋』の本を通して少しだけ繋がっているだけだったのですが、本人達の周囲の人々に接点が増え・・・まさに螺旋の渦。
最後に一気に繋がる感じがよかったです。


トマス・マウドの正体が誰なのか?という謎解きはもちろん気になりましたが、それより夫婦の関係や親子、友情について興味深く読みました。

エステーバンとアリシア夫婦の関係は理想ですね。
二人のように年を重ねていけたら・・・と思えるお手本のような感じでした。


アンヘラとトマス親子の関係も素敵でした。
砦のプレゼントも愛情たっぷりで一生忘れられない大切な宝物になりそう。
アリシアからトマスへのプレゼント『はてしない物語』は私も思い出の作品なのでジーンとしてしまいました。


以下に挙げるのは様々な登場人物達のセリフなんですが、とても印象に残っています。


>「あの小説を読んでなければよかったというのは、それだったらまたゼロからあの小説を読んで楽しむことができるという意味なんです」


>「人間って、ちょっぴり不幸であることに慣れきっているみたいね。不幸でないと、自分はちょっっぴり不幸なんだと思い込むための口実をあれこれ考え出すの。〜」


>「〜辛い思いをしたことのない人間は、今あるものでは満足できないんだ。苦しい時期を経験したからこそ、いろいろなものが大切に思えるんだ。〜」


>作家と作品を比較した場合、どちらがより重要だろう。作者はいずれあの世へ旅立つが、作品は永遠に生き続ける。〜




この作品は著者の処女長編作だそう。

訳者あとがきに『半身』『カンバス』の内容紹介がされていましたが、ネタバレっぽかったので途中で読むのをやめました(笑)
ぜひこの2作も読んでみたいです。