はぴの本棚

2003年からの読書日記

リリス (ちくま文庫)作者: ジョージ・マクドナルド,George MacDonald,荒俣宏出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1986/10メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 28回この商品を含むブログ (33件) を見る

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以前読んだ『かるいお姫さま』
http://d.hatena.ne.jp/lovelyplace923/searchdiary?word=%A5%DE%A5%AF%A5%C9%A5%CA%A5%EB%A5%C9
は楽しめたのですが、今回はファンタジー好きなのにかなり苦戦しました。
途中で挫折しそうになったこともしばしば。
これは訳のせい?いやきっと予備知識のなさと理解力不足のせいでしょう。


鴉との謎かけのような会話についていけず主人公のヴェイン(空無)氏と一緒に煙に巻かれてしまった私(笑)
聖書やキリスト教にも詳しくないので理解できない部分が多かったのが苦戦した大きな原因だと思います。
「夢の文学」とも呼ばれているようにまさに夢と現実を行ったり来たりしているような感じでした。


それでもなんとか読めたのはイメージの豊かさ、美しさに圧倒され魅力を感じていたからだ思います。
図書室にある不思議な欠けた本、蝶に変身するミミズ、踊る骸骨達、変幻自在のリリスなど。


ルイス・キャロルトールキンカスタネダなどにも大きな影響を与えたと言われるだけあって、きっと彼らの想像力も大いに刺激させられたんでしょうね。
物語に登場する小人達は『指輪物語』のホビットを連想させたし、影は『ゲド戦記』を、異世界へ通じる扉は『ナルニア国物語』の衣装ダンスが自然と想像させられました。


リリスのキャラクターにもなんともいえない魅力を感じたのですが、解説を読むとリリスヘブライの伝承に出てくるアダムの最初の妻で天使だったとのこと。
イヴにアダムを奪われた悲しみから魔性を発揮し子どもをさらったり、男をたぶらかしたりするようになったそうです。
こういう背景を知るとリリスはかわいそうな女性だとちょっと同情してしまいます。
リリスが悪くなった原因はイヴにもあるような・・・





>この作品をめくるめく色彩に満たされた音楽として味わうこと

訳者の荒俣さんがおっしゃっているように難しいことは考えず物語に身をゆだねるのが一番楽しめるコツなんでしょうね。


リリス』は著者の晩年の作品だそうです。
初期の頃の作品『ファンタステス』と照応し合っている部分もあるとのこと。
気力を振り絞る読書になりそうですが、合わせて読むとより一層世界が広がるのかもしれないと思いました。


気になっていた『北風のうしろの国』も読んでみたくなりました。