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2003年からの読書日記

お菓子と麦酒 (新潮文庫 モ 5-7)作者: ウィリアム・サマセット・モーム,William Somerset Maugham,上田勤出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1959/11メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る

>イギリス文壇の偽善的内幕と俗物性を痛烈に暴露風刺したというモームの代表的作品
とのこと。
タイトルからはほんわかした甘い雰囲気の物語かと想像してしまいますが、予想に反して随所に風刺が効いた作品でした。


文豪トマス・ハーディと当代の人気作家ヒュー・ウォルポールをモデルに書かれた作品だということですが、彼らを知らないのが残念でした。
イギリスの文学作品や作家もたくさん登場するのですが、名前は聞いたことがあっても作品は未読だったり・・・予備知識があればあるほど楽しめると思います。


読み始めはしばらく入り込みにくかったのですが、主人公の男性(わたし)の回想が始まったくらいから俄然楽しめるようになりました。

 
文壇の大御所ドリッフィールドの最初の妻ロウジーの登場で物語が明るく生き生きと動き出す感じがしました。
「銀色に輝く太陽」のような女性だなんて・・・まさに魔性の女ですね。


多くの男性が彼女に夢中になり小悪魔的な魅力にはまっていく様子は読んでいておかしかったです。
いつの時代にもこういう女性はいるのかもしれませんが、やっぱり同性からは嫌われてましたね(笑)
主人公のわたしも例外ではなく、思いっ切り翻弄されていました。
彼女への世間の評判に対してつい弁護してしまう様子、自分だけは特別だと思いたい感情は惚れた男の弱みなのでしょうか。
町中に知れ渡るくらいの性的無軌道(!)にもかかわらず無邪気でチャーミング、どこか憎めない部分があるというのは彼女の持つ天性のものかもしれないと思いました。


最後にロウジーと再会する場面も印象的でした。
ドリッフィールドとロウジーの悲しい過去のせいだけではないのでしょうが、寂しさや苦痛を忘れるためにロウジーは男性遍歴を重ねるようになったのでしょうか?
ドリッフィールドも知らなかったわけではなく、きっと分かっていて気づかないふりを続けていたように思いました。
彼は書くことが救いになったけれど、ロウジーにはそれがなかったのですから。



これが初モーム作品でしたが次は有名な『月と六ペンス』も読んでみたくなりました。