はぴの本棚

2003年からの読書日記

月の森に、カミよ眠れ (偕成社の創作文学)作者: 上橋菜穂子,金成泰三出版社/メーカー: 偕成社発売日: 1991/12メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る

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天と地の守り人」シリーズの予約待ちの間、気になって借りてみました。
上橋菜穂子さんの初期の作品(2作目)だそうです。


舞台は日本の古代。
山奥のムラで焼き畑、採集・狩猟をしながら静かにつつましく暮らしていた人々。
ムラでは月の森に住むといわれるカミが強い力を持っていました。
そのカミと人々をつなぐ絆は<カミンマ>という女性。
カミンマはムラの長の巫女として代々選ばれてきたのです。


そんな暮らしをしていたムラ人達でしたが、時代の波はは大きく変化していて大和朝廷の力がじわじわと影響を及ぼし始めます。
ムラの男達は6年もの長い間、朝貢にとられていました。
戻ってきた男達は異なる文化を知り残っていたムラ人達に話します。
このままでは自分達のムラは貧しさから抜け出せず、滅びてしまうかもしれない・・・
稲作をして米を朝廷に貢げば辛い朝貢も免除されるとのこと。
でも稲作をする場所はカミの領域<かなめの沼>しかなかったのです。
このままの暮らしを細々と続けるか?カミと戦いその力を封じて稲作を始めるか?ムラは大きな岐路に立たされます。


三人の若者がこの物語の主役なのですがそれぞれとても魅力的でした。
現在のカミンマであるキシメ。月の森のカミとホウズキノヒメの間に生まれたタヤタ、山のカミを父とし、人である母との間に生まれたナガタチ。
三人それぞれが自分を見つめ苦しみ、悩む姿は時代を問わず若者に共通する部分なんじゃないかと思いました。
特にキシメの長い語りにはついつい惹きこまれてしまいました。


この物語を書くきっかけになった『あかぎれ多弥太伝説』
資料が少ない中、想像を大きく膨らませてこんな素敵な物語を紡ぐことができる上橋さんはやっぱりすごいです。
自分の遠い祖先の暮らしはこんな感じだったのかもしれないとリアルに想像できるようなファンタジーでした。