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2003年からの読書日記

橋をかける―子供時代の読書の思い出作者: 美智子出版社/メーカー: すえもりブックス発売日: 1998/11/25メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 33回この商品を含むブログ (21件) を見る

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この本は1998年インドのニューデリーで開かれた国際児童図書評議会第26回世界大会においてビデオテープによって上映された皇后美智子様の基調講演を収録したものです。

IBBY(International Board on Books for Young People)という団体があるのは初めて知りました。
1953年にスイスのチューリッヒで設立され、本部は現在同国のバーゼルにあるそうです。
子どもと子どもの本をつなぐために世界中のあらゆる国で地道に活動している多くの人達がいること、とても素晴らしいと思います。

さて講演ですが、この26回大会のテーマが「子供の本を通しての平和」ということでご自身の読書体験を振り返っておられます。
戦争による疎開生活をはさんで生活環境に変化の多い時代に育った美智子様は、身近にあった何冊かの本からとても大きな影響を受けたようです。

その頃出合って思い出に残っている『でんでん虫のかなしみ』新美南吉著、『日本名作選』『世界名作選』山本有三編はぜひ手に取ってみたいと思いました。


本のタイトルにもなっている「橋をかける」という言葉が素敵です。

>生まれて以来、人は自分と周囲との間に、一つ一つ橋をかけ、人とも、物ともつながりを深め、それを自分の世界として生きています。この橋がかからなかったり、かけても橋としての機能を果たさなかったり、時として橋をかける意志を失った時、人は孤立し、平和を失います。この橋は外に向かうだけでなく、内にも向かい、自分と自分自身との間にも絶えずかけ続けられ、本当の自分を発見し、自己の確立をうながしていくように思います。


幼い頃からの読書体験はやっぱり大きな影響を与えるのだと感じました。
実体験ももちろん大切ですが、なんでもかんでも全部体験しようとすると限界があるし、できません。
でも、読書は文字が読めれば誰にでも開かれている無限の広がりがあり、ページをめくるだけで本の世界に行くことができます。
読書することで想像力が広がり、登場人物の喜びや悲しみを感じ、他者への思いを深めることもできます。

美智子様がおっしゃる読書。
根っこや翼を与え、外に、内に、橋をかけ自分の世界を広げていく助けとなること。
どれも目には見えない力だけれど、人が生きていくうえでとても大切なことだと思います。

私は幸運なことに幼い頃から本に親しみ、大人になってもずっと読み続けることができています。
読書に助けられたことは数知れず・・・
喜びを感じるもの、悲しみを感じるもの、色々ありましたが私の根っことなり、翼となっているんでしょうね。
だから読書はやめられないのかな?

もちろんこれからも読み続けていくつもりですが、他の人たちにもぜひ読書の喜びを知ってもらいたいです。
まずは我が子から、そして周りの子ども達にも。
私にもいつかそんなお手伝いができたらいいなと思っています。


講演の最後の言葉も印象的です。
>読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人との関係においても。国と国との関係においても。


バーゼルより』もまた読みたいと思います。