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2003年からの読書日記

十一月の扉作者: 高楼方子出版社/メーカー: リブリオ出版発売日: 1999/09メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (21件) を見る

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これ、今月ぜひ読もうと思っていました。
最近ぐっと冷え込むようになって、ぴったりの時期に読めました。

中学生の少女爽子が主人公です。
爽子はある日素敵なたたずまいの二階家を見つけます。
そこは「十一月荘」と名前でした。

十一月荘からの帰り道に寄った文具店で、ドードー鳥の細密画が描かれた上質なノートに一目ぼれした爽子は、一月分の小遣いをはたいて購入。
それは物語を書くノートになるのですが・・・

急に引っ越しが決まり、転校話がもちあがったのをきっかけに、ずっと気になっていた十一月荘で暮らすチャンスが到来します。
なんとか両親の許しをもらい、学期終わりまでの2ヶ月間「十一月荘」で一人暮らしをすることに。
そこでは管理人の閑(のどか)さん始め、母子家庭の親子、建築家の女性が住んでいました。
住人達と交流を深めながら、物語を書くことで自分と向き合い、成長する爽子の姿がとてもよかったです。

物語を作る爽子の気持ちを書いた文章はとてもリアル。
>ありもしなかったものを、自分の力で、目に見えるようにしたことの満足感は、自由を得た解放感にも似ていた。
伸びやかな広がりの中で心を飛ばしているような気持ちだったのだ。
高楼さんが実際に感じていることなのかな?と思ったりしました。

また閑さんが話してくれる十一月荘の名前の由来もいいなと思ったし、住人も皆素敵で気持ちいい人たちなのがよかったです。
お互いの距離感も絶妙で、気を遣う部分にはちゃんと遣うところも好感が持てました。

また反感を持っていた母への感情が少しずつ変わってくるのも、爽子の成長が感じられるようでした。
子どもはもちろん親の影響を受けるけれど、親もたくさん子どもから影響を受けている・・・
というような文章があって、それもすごく共感する部分でした。

爽子が書く物語に現実がシンクロする部分があまりにも多かったのは、やや甘いかなと思ったのですがそれでも十分面白く読めました。

この十一月荘の暮らしが期間限定なのもよかったです。
たった2ヶ月だけれどそれは充実した密度の濃い期間で、十一月荘の住人たちとのつながりもこれからずっと続いていくんだろうなと思うラストでした。
3学期からは新しい生活が待っている爽子。
十一月荘は新たな未来に向かって心を落ち着ける場だったんでしょうね。

中学生の頃読みたかったなと思う作品でした。

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ペミカン > トントンさんおはようございます。 高楼方子さんの魅力いっぱいの本ですよね。私もとても好きです。同じ頃NHKテレビであってた「ちゅらさん」を思い出す雰囲気があるのですけどーー。リビングの風景とか。 (2006/11/16 08:43)
トントン > ぺミカンさん、こんにちは♪本当に、高楼さんの魅力がいっぱい詰まった本でした^^この時期に読めてよかった〜。「ちゅらさん」私、熱心に見てたんですよ♪だからなんとなく雰囲気が分かる気がします。 (2006/11/18 14:20)