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2003年からの読書日記

その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)作者: ジュンパ・ラヒリ,小川高義出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2004/07/31メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 19回この商品を含むブログ (80件) を見る

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デビュー作『停電の夜に』の雰囲気がとても好きだったので、2作目のこれはかなり期待して読みました。

期待しすぎるとがっかりすることもあるけれど、さすがはラヒリさん!
読者の期待を裏切らない作品、堪能しました。


短篇もよかったけれど、長篇も素晴らしかったです。
海外小説はファンタジー以外めったに読みませんが、ラヒリさんは別格!ずっと追いかけていこうと思っています。


物語は、インド系移民の夫婦アショケとアシマの息子が誕生する場面から始まります。

夫の人生の分岐点になった出来事から息子に「ゴーゴリ」と名づけるのですが・・・

このゴーゴリという名前が鍵となり、物語は進んでいきます。

若い夫婦だったアショケとアシマの暮らしから、ゴーゴリの少年時代、青年時代へと移り変わっていくのですが、とても自然な流れでスムーズに読めました。

語り手もアショケだったり、アシマだったり、ゴーゴリだったりします。


両親とゴーゴリの世代間の違い、異国で暮らすことについて、故郷への思い、恋愛、孤独、人生についてなど・・・

私は日本人でここに書かれている人々とは全然環境が違うけれど、なぜか共感したり、通じる部分が出てきます。

読みながら自分の心があちこち漂っている感じがしました。


文章も素敵でしたが今回は絵のように印象に残る場面が多かったです。

子ども達が成長して一人暮らしをしているアシマが、離れて暮らしている家族や親戚に手作りのクリスマスカードを書いている場面。

様々に思いが飛んで今の自分を振り返っているアシマ、私ももう少し年齢を重ねたらこんな風に感じるのだろうか?

そう思って印象に残ったのかもしれません。


父アショケと海に出かけた場面をゴーゴリが回想する場面も素敵でした。

幼い頃、家族でよく海にドライブに行った記憶。

父と一緒に防波堤から灯台へずっと歩いたこと。

>「覚えておけよ。おれたち二人で遠くへ行ったんだ。もう行きようがなくなるまで行ったんだからな」

父が息子に語る姿が絵のように浮かんで来ます。

長い物語だし、けっして明るいものではないのですが、とても心地よい読書ができました。


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ちゃんこん > はじめまして。私も『その名にちなんで』は大変気に入った小説です。もちろん移民としての民族的なアイデンティティという輪をかけた複雑さがこの小説にありますが、世代の隔絶みたいのがよくわかるんです。そんなことに共感しました。この親父は身も心も離れていく子供に、おやじの刻印をさりげなく打ったんだと思います。いやみじゃないところが素敵だと思いました。 (2005/09/13 21:35)
ミワ > トントンさん、「その名に〜」もやっぱりいいんですね!わたしもラヒリさんはずっと追いかけていこうと、「停電の夜に」で決めました。絵のように印象に残る場面、わかるような気がします。ああ楽しみ! (2005/09/13 22:04)
nanao > もう読まれたんですね。
これぞ、小説って感じですね。
絵になる場面ですか、読んでみたいですね。 (2005/09/14 01:00)
ぱせり > うわあ、とても読みたいです。わたしも「停電の夜に」がとてもよかったので、この本もいつか、と思っていました。「長い物語だし、けっして明るいものではないのですが、
とても心地よい読書ができました。」と、★5つ。必ず読みます!!
(2005/09/14 08:17)
雨あがり > トントンさんもとても心地よい読書だったようですね〜!私もこの本を読んだ時、とても贅沢な時間を過ごしたように感じました。ラヒリさんの作品は、私も必ず読んでいきたいと思っています。 (2005/09/14 13:46)
トントン > ちゃんこんさん、初めまして。ちゃんこんさんもお気に入りの小説なんですね!世代の隔絶・・・読んでいて何度も感じましたが、家族の絆もまた感じることができたように思います。
>この親父は身も心も離れていく子供に、おやじの刻印をさりげなく打ったんだと思います。いやみじゃないところが素敵だと思いました。
本当にそうですよね!
ミワさん、期待していた以上によかったですよ♪それに堀江敏幸さんの解説文も裏表紙に書かれていてうれしかったです。ぜひ読んでみてくださいね♪
nanaoさん、私はあんまり絵になる場面って浮かばないんですがこれはどんどん出てきて不思議でした。小説の世界を堪能できたように思います。
ぱせりさん、私は短編よりもこちらが好きだったので評価を上げて星5つにしました。長編ですがどっぷり世界に入れますよ。ぱせりさんの感想も楽しみにしてますね♪
雨あがりさん、もう本当によかったです!
>とても贅沢な時間を過ごしたように感じました。
この言葉すごく分かります。これだから読書は止められないですよね! (2005/09/14 23:21)
たばぞう > おおよそ1年前に読みました〜。すごく面白かったです。「停電の夜に」は購入しているのですが、積読したままです。読まなきゃ〜・・・と、一体何人にレスしたかしら・・・。 (2005/09/17 10:59)
トントン > たばぞうさんの感想も読ませてもらいましたよ。翻訳小説の核になる読者が3000人って思ったより少なくてびっくりでした!たばぞうさんはもちろん核になる読者ですよね^^私も少しずつ翻訳文学に興味が出てきたので(ラヒリさんのおかげかも)色々読んでいきたいと思っています。『停電の夜に』もよかったですよ〜 (2005/09/17 22:34)
ケイ > こんばんは〜この本五つ星!評価高いなあ。トントンさんがお気に入りなら、ぜひ覚えておかなければ。。いつか読みたいです。レスありがとう。またよろしくお願いします。。 (2005/09/25 20:37)
ケイ > 雨あがりさんの、贅沢な時間というコメントにも惹かれますね。。たばぞうさん、一年も前に。さすがです。トントンさん、また来ますね♪ (2005/09/25 20:38)
トントン > ケイさん、こんばんは♪ラヒリさんは、以前『停電の夜に』を読んだ時、すごく好きになったのですがこの長編も素晴らしかったです。雨あがりさんの言う贅沢な時間、ケイさんもぜひ味わってくださいね。たばぞうさんは翻訳小説をよく読まれているのでとても参考にさせてもらってます^^本プロのおかげで読む本の幅もどんどん広がってきているのがうれしいなと思います。 (2005/09/26 22:13)
ぱせり > トントンさん、読みました。すごくよかったです。本当に印象に残る場面、多かったです。クリスマスカードを書く場面、あのクリスマスカードすてきですね。まねしたくなってしまった。でも、続く場面を考えるとドキドキ・・・。また、ゴーゴリとアショケとで防波堤の一番端まで歩いたことや、父の言葉を思い出しているゴーゴリ、凄く、印象に残っています。本当にどっぷりとつかってしまいました。先を急いで読みたいという感じではなくて、いつまでも、この心地よい文章に乗っかって読んでいたいと思いました。
本当に3作目、楽しみです。 (2005/11/03 13:38)
トントン > ぱせりさん、こちらにもありがとうございます。十分楽しまれたようで私までうれしいですよ♪印象に残る場面たくさんありましたね!ゴーゴリとアショケの防波堤の一番端まで歩いた場面・・・私は特に印象に残っています。「心地よい文章に乗っかって読んでいたい」というぱせりさんの言葉本当にそうだなと思います! (2005/11/03 21:29)