はぴの本棚

2003年からの読書日記

岬のマヨイガ (文学の扉)作者: 柏葉幸子,さいとうゆきこ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2015/09/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る

あの、おそろしい地震のあった日、萌花ちゃんは、会ったこともない親戚にひきとられるために狐崎の駅を降りました。
そして、たまたま同じ電車に乗ったゆりえさんは、自分の境遇と似た萌花ちゃんから目が離せず、いっしょに駅を降りてしまいました。
ゆりえさんは、暴力をふるう夫から逃れるために、あてもないまま東京から見ず知らずの北の地へと向かっていたのでした。

そんなふたりの運命を変えたのは、狐崎のまちを呑み込んだ巨大な津波でした。

中学校の体育館に避難したふたりは、身元を問われて困惑します。
だって、帰れる家、帰りたい家はないのです。
手をにぎり合うふたりに救いの手をさしのべたのは、山名キワさんという、小さなおばあさんでした。

その日から、ゆりえさんは結(ゆい)さんとして、萌花ちゃんはひよりちゃんとして、キワさんと、世代の違う女性三人の、不思議な共同生活が始まったのです――。

遠野物語を彷彿とさせる東北の民話が随所に挟み込まれるほか、河童や狛犬といった異世界の住人たちが数多く登場する日常ファンタジー

柏葉幸子さんのデビュー40周年記念作品で、第54回野間児童文芸賞受賞作。
柏葉さんは岩手県の生まれ、絵を描かれたさいとうゆきこさんは青森県生まれで岩手県在住とのこと。
東日本大震災をモチーフにした作品ということで少し緊張して読み始めましたが、すぐに引きこまれました。

辛い境遇だったゆりえさんと萌花ちゃんは震災をきっかけに出会います。
二人を救ってくれた山名キワさんがとても素敵なおばあちゃんで独特の存在感がありました。

ゆりえさんは結さんとして、萌花ちゃんはひよりちゃんとしてキワさんと共同生活を始めます。
他人同士なのにお互い思い合い温かい交流が生まれていく様子がとてもよかったです。

河童や狛犬、ふったち、座敷童などが登場し、不思議な出来事がたくさん起こりますが、日常と地続きな感じがしたのは東北や遠野の温かい言葉だったり、土地柄なのかもしれません。

マヨイガって本当にあるのかもしれないと思ってしまいました。
目には見えないものたちが私達を見守ってくれていると思うと心強くなります。

これからも三人が支え合って笑顔で暮らしていけますように。

この作品から元気をもらえました。