はぴの本棚

2003年からの読書日記

デフ・ヴォイス作者: 丸山正樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/07メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログを見る

こんどは、わたし達があなたの言葉をおぼえる

結婚に失敗し、職場でも挫折した荒井は生活の為に手話通訳士となる。
徹底した取材のもと、ろう者の社会を描き出した異色ミステリー


手話は若い頃に興味を持ち、地域のサークルで少し習った経験はありますが、現在はすっかり忘れてしまって全く分からず。


「聴こえない者」の側は、自らを称するのに「ろう者」という表現を好んで使うこと、手話よりは口話教育(聴覚口話法)がろう教育の現場で主に使われている教育法だということ、聴こえるろう者をコーダと呼ぶことなどあまりにも知らないことばかりで愕然としました。

最初、心を閉ざしているような荒井に感情移入できなかったんですが、彼の育った環境や苦い思い出、今の状況が分かってくるにつれて、だんだん気持ちが変わってきました。
瑠美の正体は早くからなんとなく予想できたのですが、事件の真相は最後まで分からず夢中になって読みました。



著者の奥様は頚椎損傷という重い障害を負っているそう。
あとがきも強く心に響くものでした。


>障害を持つ人たちだけに限らず、世の中には、何か訴えたいことがあっても、大きな声を上げられない人たちが少なからずいる。そういう人々の声を、小説という形でより多くの人たちに届けられたら、と思う。


たくさんの方に読んでもらいたい小説です。
著者の新作も楽しみに待ちたいと思います。