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2003年からの読書日記

アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)作者: 村岡恵理出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/08/28メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (20件) を見る

戦争へと向かう不穏な時勢に、翻訳家・村岡花子は、カナダ人宣教師から友情の証として一冊の本を贈られる。
後年『赤毛のアン』のタイトルで世代を超えて愛されることになる名作と花子の運命的な出会いであった。
多くの人に明日への希望がわく物語を届けたい──。
その想いを胸に、空襲のときは風呂敷に原書と原稿を包んで逃げた。情熱に満ちた生涯を孫娘が描く、心温まる評伝。

お孫さんである村岡恵理さんによる評伝。
ずっと読みたいと思っていましたが、今回NHK朝ドラ「花子とアン」をきっかけにやっと手に取ることができました。
翻訳者の生涯にスポットを当てるというのはとても珍しいのではと感じました。
客観的で冷静な文章に好感が持てました。

朝ドラの原作と聞いていたのですが、登場人物の名前はもちろん印象がかなり違う・・・
ドラマは15分の間に山場があるよう面白く作ってあるので、本とは全くの別物と考えた方がいいんでしょうね。
私はどちらもそれぞれ楽しめました。


村岡花子さんが戦争をくぐりぬけてアンシリーズを翻訳してくれたこと本当によかった!
佐佐木信綱さんに短歌を学んでいたこと、幼い息子さんの死、その後、妹の子みどりさんを養子に迎えたことなど知らないことがたくさんありました。
ヘレンケラーの通訳をされたこと、石井桃子さん、渡辺茂男さんとの交流などもあったんですね。


『窓辺に倚る少女』に決まりかけていたタイトルが娘のみどりの助言もあり『赤毛のアン』になったこと、プリンスエドワード島に行くチャンスがあったのに結局やめたエピソードも興味深く読みました。


東洋英和女学校での寄宿舎生活がもたらしたものがとても大きかったのだと感じました。
ドラマでもありましたが、卒業式でのブラックモア校長の言葉が素晴らしかったです。


>「今から何十年後かに、あなたがたが学校生活を思い出して、あの時代が一番幸せだった、一番楽しかった、と心底から感じるなら、私はこの学校の教育が失敗だったと言わなければなりません。人生は進歩です。若い時代は準備のときであり、最上のものは過去にあるのではなく、将来にあります。旅路の最後まで希望と理想を持ち続けて、進んでいく者でありますように」


赤毛のアン』シリーズを読んだのは、中学生か高校生の頃です。
村岡花子訳の新潮文庫版を愛読していたのでとても思い入れがあります。
とはいえ、シリーズ全巻を読破したわけではなく、『赤毛のアン』『アンの青春』『アンの愛情』くらいまでの記憶しかないのが残念。

恵理さんの姉美枝さんが訳された『アンの想い出の日々』上下巻も出ていたのは今回初めて知りました。
全11シリーズ、再読を兼ねて読みたいと思いました。
大人になった今の自分がどう感じるのか楽しみです。
村岡花子さん以外の翻訳もたくさん出ているので読み比べてみるのも面白そうだと思いました。

大好きな梨木香歩さんが解説を書かれていたのもうれしかったです。