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2003年からの読書日記

アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫)作者: やなせたかし出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/12/17メディア: 文庫この商品を含むブログ (7件) を見る

「手のひらを太陽に」の作詞者でもある戦中派の作者が、自身の風変わりなホップ・ステップ人生を語る。
銀座モダンボーイの修業時代、焼け跡からの出発、長かった無名時代、そしてついに登場するアンパンマン――。
手塚治虫永六輔いずみたく宮城まり子ら多彩な人びととの交流を横糸に、味わい深い人生模様が織り上げられていく。
図版多数収録。


本書は1995年に出版されたもの(75歳)に文庫あとがきを加えて出されたとのこと。
やなせたかしさんには好々爺のイメージを持っていましたが、若い頃の話など読ませていただくとちょっと違う感じ。
戦争を挟んで苦しい時代を生きてこられたためか、優しさの中にも逞しさがあり強い芯が一本が通っているように思いました。


>しかし、正義のための戦いなんてどこにもないのだ。
 正義は或る日突然逆転する。
 正義は信じがたい。


>逆転しない正義とは献身と愛だ。


戦争体験から痛感したこと・・・これがアンパンマンの原点だったんですね。
今は知らない人がいないくらいの大人気キャラクターですが、1988年(やなせさん69歳の時)にテレビ放送がスタートしたとありました。
それまでの長い時代、不思議な出会いに恵まれ、自分に関係のない分野の仕事の依頼を多数引き受け、自分のものにしていくのが興味深かったです。
人生の後半、全ての経験が実になっていきついにアンパンマン誕生!


奥様とのエピソードも素敵でした。
逆プロポーズになるのかな?奥様の殺し文句にはドキドキ(笑)


>「あなたは外見はよくないが普通の人とちょっと違うところがある。かならずいつか認められます」

結婚後、やなせさんが花開くまでずっと信じて支え続けてこられた様子に感動しました。


アンパンマンミュージアムのことも書かれていましたが、墓標のつもりで作ったというのには驚きました。
高知のアンパンマンミュージアムには結婚してから3回(夫婦で1回、長女が生まれて1回、次女が生まれて1回)行ったほどお気に入りです。


2013年10月13日に亡くなったやなせさん。
文庫あとがき(九十四歳のごあいさつ――「岩波現代文庫あとがき」に代えて)は2013年2月。
最後の最後まで精力的に仕事を続けられたこと、ただただすごいと思いました。