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2003年からの読書日記

辞書の仕事 (岩波新書)作者: 増井元出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2013/10/19メディア: 新書この商品を含むブログ (13件) を見る

いま,辞書に注がれる視線が熱い。
数多あることばから何を項目として選び,有限のことばでどう説明するのか。
地道な作業ながら,考えようによってはドラマチック。
でも実際,どんなドラマがあるのか,ないのか? 
辞書づくりにかかわるあれこれのエピソードを,『広辞苑』『岩波国語辞典』などその道30年の元編集者が楽しく語る。

以前『舟を編む』(三浦しをん著)が本屋大賞になって映画化されたこともあり、最近辞書がクローズアップされている印象です。
私自身、辞書を読んで色とりどりのアンダーラインを楽しむ子どもだったのでなんだかうれしい。
辞書好きだったのに、今では手軽にパソコンで調べることも多くなって紙の辞書に触れる機会が減ってしまったのは少し寂しく感じました。


著者が元辞書編集者ということもあり、辞書作りの大変さはもちろん、面白さ、楽しさ、情熱など・・・文章から辞書を愛している様子がびんびん伝わってきました。

広辞苑は累計一千万部をゆうに超えるとは知らなかったのでびっくり!
広辞苑の文字数はざっと1500万字、通常の新書150冊分だそう。
1ページの字数は5000字で毎日1ページずつ読んでも読み終わるのに8年かかる(笑)とのことです。


擬音語・擬態語は執筆者泣かせのことばであること、写真より手書き挿画がなぜいいのか?他社の辞書の評価、逆引き辞典の活用法、電子辞書と紙の辞書の違いについてなど興味深く読めました。


印象に残った文章。


>ことばが表す世界は思いのほか広くて、がちがちの定義では捉えきれないふくらみを持っているものです。


>ことばの専門家は概してことばの変化に寛容です。ことばが変わるのは当然のことだと考えるからでしょう。近頃の日本語は乱れている、などという声は、必ず専門家でないところから発せられます。

これはちょっと意外でしたが、よく考えてみると納得。


>膨大なことばの中から、実際にどれを取り込むかの判断はまた大問題ですが、忘れてはならない基本的な姿勢は、辞典(事典)が社会のことばをリードするのではない、辞典は世間のことばの後からついてゆくのだということです。


>「全体と細部の両方を意識してはじめて、正確でかつ分かりやすい図版が生まれる」として「鳥の目でとらえ、虫の目で描く」と表現(『広辞苑』の挿画のベテラン画家矢崎芳則さん)


広辞苑の最新版は2008年に出た第六版とのこと。
次の第七版を待ってもいいけれど・・・購入したくなりました。