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2003年からの読書日記

いのちに触れる―生と性と死の授業作者: 鳥山敏子出版社/メーカー: 太郎次郎社発売日: 1985/11メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (7件) を見る

★★★★
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鳥山敏子さんの名前を知ったのは大学生の時でした。
この本だったかは忘れましたが「こんなすごい先生がいるんだ!」と大きな衝撃を受けたのを覚えています。
たくさんの下準備をして授業内容を練り上げていることはもちろん、子ども達一人ひとりを見つめ、真剣に向き合っている姿勢が感じられて素晴らしいと思いました。
普遍的な内容だからか今読んでみても全く古びていないことに驚きました。

自分自身を見つめ体の声を聞き、内面を深く掘り下げていく授業。
全て人間とは何かを考えることにつながっていくんですね。
現場で頑張っている先生方も多いとは思いますが、通常の授業でここまで思い切ったことはなかなかできないような気がします。

鳥山さんの授業がクラス全員に合っていたとはいえないかもしれない。
かえって生きにくい体になってしまった子ども達もいたかもしれない。
でも子ども時代の柔らかい頭と心で得たものはきっと大きいはず。
鳥山さんの授業を受けた子ども達が今どんな大人になっているのかも興味が湧きました。


目次より

Ⅰ 原爆から原発へ、生命を考える
授業1 にわとりを殺して食べる
授業2 原子力発電所とゴミ
授業3 人間の欲望はどこまで行きつくのか

Ⅱ 生と性と死を考える
授業1 飼育から屠殺まで
授業2 ひととブタの生と性
授業3 ブタ一頭、まるごと食べる


福島原発事故が現在進行中ということもあり、原発の授業の部分が特に印象的でした。

>子どもたちをかんたんに「原発反対」という子にしてはならない。しかし、いま、原子力発電がどういうしくみになっていて、どういう問題をかかえていて、どういう人たちによって支えられ、好むと好まざるとにかかわらずその恩恵をうけているか知らせたかった。

この本が出版されたのは1985年。
当時、原発は今の半分以下の22基だったとのこと。
実際に働いていた堀江邦夫さんの生の声は子ども達の深い部分にきっと届いたんでしょうね。
水木しげるさんのイラストもインパクトがありました。
当時から現在も下請け労働者の現状はそう変わっていないのではないかと感じました。


>自分に直接関係ないからいい、自分が直接関係しないから平気でいられるというこの共感能力のなさ、自分だけよければいいというエゴ、これが行きつくはては・・・・・・。もし、そのはてを望まないならば、いまある自分をみつめなおし、変えないことには、責任をいつも社会や他人や制度になすりつける人間になってしまう・・・・・・。

>「ヒトが殺したものは平気で食べるが、自分が殺すのはいやだ」ということは、いったいどういうことなのか。そう考える自分について考えてもらおうと〜

>生きるということは、生きているものを食べていることです!食べるということは、生きているものを殺すということです!殺して自分のいのちにしてしまうことです!
食べもので生きていないもの、生きていなかったものは一つもありません」

>学校の授業は、子どもたちの存在に大きな影響を与えることもあるが、そして、大きな転機への一つのきっかけにもなるが、しかし、なんといっても親の影響は決定的といえるほどの力をもつ。親がどう自分を見つめ、どう生きているのか。それに子どもたちの現在も、未来もかかっている、といっても過言ではないだろう。

子どもは大人の姿を見ている、特に親の言葉と同時に体で発するメッセージ(本音の部分)を感じて大きな影響を受けているという文章には身が引き締まる思いがしました。
この言葉はずっと心に留めておいて折に触れ思い出していかなくてはいけないと思いました。


紹介されていて読みたくなった本をメモしておきます。

『土の絵本』田島征三
原発ジプシー』堀江邦夫著
『東京に原発を!』広瀬隆