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2003年からの読書日記

伏 贋作・里見八犬伝作者: 桜庭一樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/11/26メディア: 単行本 クリック: 92回この商品を含むブログ (53件) を見る

★★★★
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桜庭さんの小説はエッセイ以外では『赤朽葉家の伝説『私の男』を読んだくらいですが、どれも映像が浮かんできます。
今回の『伏』もそう。
江戸時代が舞台ということでどんな雰囲気だろうと楽しみにしていたのですが、映像に加えて登場人物達の声まで聞こえてくるようでした。

(出版社の内容紹介です)
時は江戸時代。
伏と呼ばれる若者による凶悪事件が頻発し、その首に幕府は懸賞金をかけた。
伏とは──人にして犬、体も心も獣のよう。
ひどく残酷な面があり人々から恐れられる一方で、犬の血なのか驚くほど人懐っこいところもあるという。
ちっちゃな女の子だが腕利きの猟師、浜路は浪人の兄に誘われ、伏を狩りに山から江戸へやってきた。
獣の臭いに敏感な浜路はすぐさま伏に気づき追いつめる。
そんな浜路のまわりをうろつく瓦版の読売、冥土から、浜路は伏にまつわる世にも不思議な物語を聞く。
そして冥土に誘われた場所で、一匹の伏をみつけた浜路。
追いかけるうちに、伏とともに江戸の秘密の地下道へと落っこちる。
真っ暗闇の中で、狩るものと狩られるものによる特別なひとときがおとずれた――。

主人公の少女、14歳の猟師浜路がとても魅力的でした。
異母兄の道節、一膳飯屋のおかみでこそ泥の船虫、曲亭馬琴の息子で読売の冥土などもいい味を出してました。
信乃、凍鶴、毛野、現八など犬人間の伏達もミステリアス。
最後まで楽しませてもらいました。

本編はもちろん面白かったのですが、作中作の『贋作・里見八犬伝』(滝沢冥土作)に夢中になりました。
信乃の語り「伏の森」もよかった。
ラストの感じからいくと・・・続きが期待できるのかな?
桜庭さんの時代小説、期待以上に面白かったのでこれからも書き続けてほしいです。

読了後、出版社の特設ページで挿絵を描かれた鴻池朋子さんとの対談を読みました。
浜路のイラストは桜庭さんがモデルらしいです。

本編の『南総里見八犬伝』もぜひ読んでみたいと思いました。
子どもの頃、薬師丸ひろ子さん主演の映画「里見八犬伝」の再放送を見た強烈な印象が残っています。
1814年(48歳)から 1842年(76歳)まで28年かかって書かれた壮大な伝奇物語ということで手強そうですが、いつか手に取ってみたいです。

『現代語訳 南総里見八犬伝曲亭馬琴著、白井 喬二翻訳 上下巻(河出文庫)、『南総里見八犬伝平岩弓枝著(中公文庫)、『南総里見八犬伝』石川博著編(角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) あたりのダイジェスト版なら取っつきやすそう。
機会を見つけて挑戦したいと思います。