はぴの本棚

2003年からの読書日記

色々な気持ちが渦巻いてなかなか冷静になれず感想を書くのをやめようか迷いましたが、やっぱり記録として残しておこうと思います。

9月4日に小出裕章さんの講演会に参加してきました。
『原発のウソ』を読んでいたので、直接お話が聴けるのを楽しみにしていました。
500人ほど入る会場はほぼ満席になっていて関心の高さが伺えました。
スタッフでお手伝いをしていたのもあり、会が少し始まってから聴いたのですがとてもよかったです。


小出裕章さんは1949年生まれ。
京都大学原子炉実験所助教京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教

講演タイトルは「原子力の専門家が原発に反対するわけ」

原子力発電は湯沸かし装置という話から始まり、旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所の事故、日本の核燃料工場JCOでの臨界事故、遺伝子の問題、そして現在進行中の福島原発事故のこと・・・約2時間たくさんのことをお話してくださいました。
配られた14ページの資料も読み応えがあり、分かりやすかったです。


「世界は変わってしまった」という言葉が何回か出たんですが、それを聞くたびになんともいえない悲しい気持ちになり涙をこらえながら聴きました。


チェルノブイリ原子力発電所放射線管理区域に指定しなければならない程の汚染を受けた土地の面積は、日本の本州の六割に相当する14万5000平方キロメートルだったとのこと。
放射線管理区域とは・・・放射線業務従事者が仕事上どうしても入らなければならない時だけに限って入る場所で普通の人々がそれに接する可能性があるのは、病院のX線撮影室くらい。)
特に汚染の激しい地域から約40万の人が避難させられただけで、残りの500万人を超える人々が事故後25年経った現在でも汚染地域で暮らしているということに衝撃を受けました。

小出さんによると福島の東半分を中心にして、宮城県南北、茨城県、栃木県北部などは放射線管理区域に匹敵するほどの猛烈な汚染を受けているそう。
福島原発事故も同じレベル7だと言われていますが、未だ解決のめどが立たないことを考えるとチェルノブイリ原発事故を軽く超えてしまいそうな気さえします。
それほどのひどい事故だったのに現在でも日本では11基の原発が動いているし、定期点検が済んだものから再稼働させようと思っている人々がいることに強い怒りを感じました。


低レベル放射線の生物影響を長年にわたって調べてきた米国アカデミー委員会の7番目の報告(2005年6月30日)も紹介してくださいました。

「被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値(これ以下なら安全という値)はない。最小限の被曝であっても、人間に対して危険を及ぼす可能性がある。」
2005年の時点で低線量被ばくの恐ろしさが既に伝えられていたんですね。
よく言われる「ただちに影響はない」という言葉は間違いではないかもしれないけれど、どれほど値が低くても被ばくは危険だということが分かります。
それなのに私達の口に入る様々な食べ物や水、肥料などの商品は原発事故後、かなり高い暫定基準値を設定されてしまっています。
基準値以下だと数値を公表しないところも多く(風評被害ということで!)その分からないものが全国に流通し続けているということに嫌な感じがします。
ちゃんとした数値を公表した方がかえっていいと多くの国民が願っているのではないでしょうか?
選びたくても選べない状況になっているのが生産者にとっても消費者にとっても大きな悲劇になっている気がしてなりません。



>極端な電力使用のピークが生じるのは一年のうち真夏の数日、そのまた数時間のことでしかありません。

電気は普通の生活をしていてもほぼ足りているということ。
自家発電からの融通や工場の操業時間の調整、クーラーの温度設定の調整などで充分乗り越えられるということ。
グラフや表などで原子力は即刻やめても困らないということを具体的に話されたことに改めて納得しました。


原発は電気が足りようが、足りなかろうが、即刻全廃すべきものです。

という言葉はまさにそうだと思っていたのでとても共感しました。


東電は倒産させるべき、日本国が倒産しても購いきれない大きな被害を出してしまったという強い言葉に小出さんの強い気持ちを感じました。


また衛星から見た真夜中の地球の写真を見せてくださったんですが、日本列島全体が煌々と輝いていることにショックを受けました。
ここまでの電気が本当に必要なのか?と思うほどの明るさで本当にもったいない。
節電は大切だし、これからも続けていく必要はありますが、全部の原発を止めても電力不足にはならないということをもっとたくさんの人達が知らないといけないと思いました。
本にもあった「知足」これを一人ひとりが心がけなければいけないと思います。



講演後の質疑応答では、簡潔にすぱっと答えてくださっている姿に好感が持てました。
子どもが集中的に遊ぶ場所(学校や幼稚園、保育所、公園など)は除染を勧めているが、基本的にはできないという答えは一番印象に残っています。
除染が可能とおっしゃる方がいる一方、難しいとおっしゃる方もありどうなんだろうと思っていたのですが、小出さんはどうしても必要なところのみだというお考えでした。


とても辛く悲しい事故が起こってしまった今だからこそ日本人は目を覚まさなければいけないと思います。
私にできることは少ないけれど、脱原発などの署名を始め、家族や友人など身近な人には本やネットで知った情報を話すことで伝えられるし、PCで情報を発信することもできます。
色々な情報があり、何でも鵜呑みにするのは怖いことで冷静な頭で判断しなければいけない難しさはありますが・・・


未来は原発のない日本に、そして世界になって欲しい!
今回の講演会でますますその気持ちが強くなりました。

講演中に紹介されていた『チェルノブイリ「消えた458の村」』広河隆一著(写真集)もぜひ読みたいと思います。