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2003年からの読書日記

健やかにさよなら 今日から始める「終わり支度」 (春秋暮らしのライブラリー)作者: 羽成幸子出版社/メーカー: 春秋社発売日: 2010/04/13メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見る

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母が図書館で借りてとてもよかったからぜひ読んで!とプッシュしてくれたので手に取りました。
サブタイトルに、今日から始める「終わり支度」とあり、私より読者年齢はだいぶ上ですが・・・読んでよかった。
人生の折り返し点を迎えた女性(60歳以上)が主な読者対象かな。



目次を紹介しておきます。


はじめに

1.「都合のいい妻」卒業日

2.男は愛嬌、女は度胸

3.家族を生きる

4.苦労の上手な味わい方−介護から見えるもの

5.老いとのお付き合い

6.健やかにさよなら

あとがき



羽成さんは1949年生まれ。
祖父母、実父母、姑と5人の介護を経験し、その間には一男三女4人の子育て・・・想像するだけでも大変だったでしょうね。


現在は定年退職後の夫との二人暮らしで執筆や講演をされているそう。
定年後の夫婦、介護についての話、子育ての話などとても参考になりました。
私にとってずいぶん先の未来に思えましたが、早めに読めたのはよかったのかも。
なんだか元気が湧いてくるような内容でした。


子育て中なので特に響いたのは子どもとのエピソードでしたが、これは後々再読したらまた違うような気がします。


特にいいと思ったのは子別れの式。
ちょっと長いけれど引用させてもらいます。


>これは子どもが十五歳になった時、親と子という向き合い方から、人間同志という向き合い方に意識を変えるのだ。この日のセレモニーとして、まず親が「十五年間、育てさせていただきまして、ありがとうございました」と子どもに礼を言う。そして、それまでの成長記録を書いた母子手帳と実印用の印鑑に金一封の十万円を添えて、手渡すのである。この十万円は、親から貰う、最初で最後の、自由に使えるお金である。
 その後の人生は、それぞれが考える。十五歳と言えば、義務教育も終わり、世のなかに出て働くことができる年齢でもある。どうしても高校に行きたいのなら、自分の力で入れる公立高校、一校だけの受験を許す。それも、徒歩、もしくは自転車で通える高校であることが条件だ。もちろん、滑り止めなどは許可しない。落ちて、どうしても行きたいと思うなら、来年を待つこと。
 かくて、子どもたちは、受験のための塾には行かず、上記の条件にあった高校を、それぞれ卒業したのである。



次々と介護をしながら4人の子育てでお金はかけたくてもかけられなかったのかもしれませんが、「お金はかけなかったが、時間と心は十分かけたと自負している」と語る著者、素晴らしいと思います。
私もここまで徹底はできないかもしれないけれど、参考にして我が家流でやりたいです。



付箋にしたい箇所だらけで困るくらいでしたが、なるべく絞って(笑)印象に残った文章を挙げておきます。


>本当の自由、本当の豊かさ、それは人に与えてもらうものではない。自分で創り、見つけ出すものだ。


>夫婦だから、分かり合えるというのは大きな間違いだ。そこで夫婦だからという甘えを廃して、夫婦だからこそ、分かり合えない事ばかりだと認識を変えたほうがいい。自分の気持ちをシッカリ相手に伝える。相手の気持ちを確認する。


>家族のなかでひとりひとりが自分を生きる。毎日の生活を意識しながら、自分を生きる。そのためには都合のいい嫁、妻、母を卒業することだ。家族を守るためにも、すこしずつ、意識しながら、卒業していくことが必要なのだ。


>苦しみから逃げずに、苦しみを利用して、自分を高める。ペースは苦しみだが、苦しみの上に、智慧が生まれ、創造性が高まるということになる。


>お金がないのは不幸ではない。お金がないと楽しめないというのが、不幸なのだ。
 お金持ちより時間持ち。楽しいことは無限にある。


>私の命は、今日限り。余命一日。そう思うことは一分、一秒、自分の人生を大切に思うことにつながるのである。


>人生とは生きている間だけではなく、いなくなったあともつづくものではないだろうか。この世にはいない、祖父母も父母もそして義母も、共に生き、暮らした人は、今も私と共に生きている。