はぴの本棚

2003年からの読書日記

ヘヴン作者: 川上未映子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/09/02メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 271回この商品を含むブログ (237件) を見る

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川上未映子さん。

私は読んでいて辛かったり、苦しかったりするものや残酷なものは正直嫌いで避ける方。
読書の世界にまで現実の暗い部分を持ち込みたくないという気持ちもあります。
でも、最近少しずつこの傾向が変わってきたように思います。
続けて読むのはきついけれどたまにはいいかなくらいには・・・


いじめが描かれているというので構えて読み始めましたが、すぐに惹き込まれました。
予想通り辛くて苦しい読書でしたが読んでよかった!


目を背けたくなるような場面もいくつかあり読むのをやめたくなりました。
といって中断することもできず、胸に重しをのせられたまま一気に読んでしまった感じです。
一読者でもそうなのだから書いている著者自身は相当苦しかったんじゃないかなと思います。



一番印象に残った場面は百瀬との会話です。

>「権利があるから、人ってなにかするわけじゃないだろ。したいからするんだよ」

「たまたま」


いじめってちょっとしたきっかけで誰もが加害者・被害者になりえるし、百瀬の言うこともそうかもしれないけれど。
人って色々な考え方や感じ方があるけれど、同じ人間でもこうまで分かり合えないものなのかと改めて感じて愕然としました。

僕の言っていることが正しいはずなのに、百瀬の言葉にも傾きそうになってしまう自分もいて複雑な気持ちになりました。



読みながらずっと考えていたのは言葉について。
言葉をいくら紡いでも相手に伝わらない虚しさ、限界、絶望を感じました。
逆にコジマの手紙の言葉に、僕とコジマの会話に気持ちの通い合いも感じました。


言葉があるのは人間だけ・・・
百瀬には意味がないと言われそうですが(笑)人間だけに言葉が授けられたのは意味があるんじゃないか?
答えは簡単には見つからないかもしれないけれど考えることは大事、言葉の力はやっぱりあると信じたいです。
著者も言葉の力を信じているからこそ小説を私達に届けてくれるのだと思っています。


後半、母と話をする場面ではため込んでいたものが押し流される感じで涙が溢れました。


しばらく余韻が残りそう。
川上未映子さん、追いかけていきたい作家に仲間入りです。