はぴの本棚

2003年からの読書日記

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)作者: こうの史代出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2008/01/12メディア: コミック購入: 23人 クリック: 507回この商品を含むブログ (327件) を見るこの世界の片隅に 中 (アクションコミックス)作者: こうの史代出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2008/07/11メディア: コミック購入: 20人 クリック: 138回この商品を含むブログ (213件) を見るこの世界の片隅に 下 (アクションコミックス)作者: こうの史代出版社/メ

(489〜491)
今年は戦後65年という節目。
戦争を経験した世代の高齢化が進む中、記憶を風化させないよう各地で催しがされているというニュースをよく目にします。


私が子どもの頃、たしか学校の調べ学習だったのでしょうか・・・母方の祖父母に戦争の話を聞いたことがありました。
当時祖父は20歳前後だったはず。
フィリピンで乗っていた船を攻撃され慌てて海に飛び込み、泳いで逃げたという話。

祖母は十代後半くらいのはず。
きょうだいの上から2番目ということで両親を助けて家事を担い、幼いきょうだいの世話をしていたそう。
今では車で移動するような遠い距離を歩いて食糧や物資を買いに行っていたという話を聞いて驚いた記憶があります。
幼かった私は遠い昔の話だと思ったくらいで深く考えなかったような気がするけれど、今となってはよく生き延びて命をつないでくれたと思います。



さて、ずいぶん前購入していたこの3冊。
以前著者の『夕凪の街 桜の国』を読み大きな衝撃があったので、読み始めるまでに時間が経ってしまいました。
戦争ものというとつい構えて読み始めてしまうのですが、そんな気持ちはすぐに大きく裏切られました。


舞台は広島。
絵を描くことが好きな主人公のすずが呉に嫁ぐところから物語は始まります。
すずのおおらかさやおっちょこちょいな性格につい笑ってしまったり和んでしまう場面がたくさん。
ささやかだけど普通の暮らしをしている一般市民が描かれているからこそなんでしょうね。


こうの史代さんの漫画は戦争をテーマにしていてもむごい場面はほとんど登場しません。
だからこそ時代が進むにつれて生活が苦しくなり、どんどん巻き込まれていく様子は強く訴えかけてくるものがありました。
空襲が激しくなり、家族やすずの身に危険が及ぶところはなんともいえない気持ちでページをめくりました。
そして戦後・・・多くのものを失ってしまったけれど最後にかすかな希望の光が見えて救われた気持ちになりました。


当時の日本にはたくさんのすず、周作、水原、径子、晴美がいたのだと想像するだけで今も胸が痛いです。
これは架空の物語ではなく過去に本当にあったことであり、実際はもっとひどかったに違いないと思うとさらに重い気持ちになります。
広島や長崎、沖縄、そして全国の多くの人々の犠牲の上にある今の平和なんだなと改めて感じさせられました。


著者は広島市出身、呉は母の故郷だそう。
あとがきもとても印象的でした。

多くの人にぜひ読んで欲しい、読み継がれていくべき作品だと思います。