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2003年からの読書日記

時の娘 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: ジョセフィン・テイ,小泉喜美子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1977/06メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る

シェイクスピアの『リチャード三世』の印象が強烈だったので、その真逆をいく本書はとても楽しめました。


主人公は捜査中マンホールに落ち入院生活を送っているグラント警部。
寝たきりで退屈を持て余している彼は友人の女優が持ってきた肖像画の一枚に目を留めます。
犯罪者とは思えない顔つきなのにこれはかの有名な悪逆非道の王リチャード三世のものだという。
疑問を持ったグラントは純粋に文献のみから真相を推理し始めます。


こうだと思っていた出来事が本当は違っていたと分かるのがすごく快感!
シェイクスピアの『リチャード三世』だけ読んでいたらこの人物像で固まってしまっていたかも。
歴史って勝者が都合のいいように作っていくものなんだと痛感しました。


探偵役のグラントはさすが刑事というだけあって冷静な目を持っているのに好感が持てました。
誰が得をするか?はキーワードですね。
彼の右腕となる調査員役のむくむく子羊ちゃん、ブレント・キャラダイン青年のコンビもよかったです。





歴史家は彼らが何を考えたかってなことばかりを書くけれど、調査員は彼らが何をしたかということだけを追いかける。


行為こそ言葉にもまして多くを語る。


これらの言葉はとても印象に残りました。





タイトルの『時の娘』とは、「真実は時の娘」というフレーズの一部であり、「時の娘」とは「真実」「真理」を意味するそう。
「真実は、今日は隠されているかもしれないが、時間の経過によって明らかにされる(明らかになる)」という意味だとされている というのはなるほどと思いました。


何度も登場するトニイパンディという言葉・・・ウェールズの南部の地名だったんですね。
意味もなるほどと思いました。
世界はもちろん現代の日本でもトニイパンディはまだまだたくさんあるような気がします。


伝聞はいかに信用ならないか、情報をうのみにすることの怖さなどハッとさせられることが多かったです。
グラント警部ほどは無理でも物事を多面的に見る目は持ちたいと思ったし、時には疑ってかかることも大事だと感じました。


歴史ミステリを読んだのは今回が初めてだったかも。
すごく楽しめたのでもっと探して読みたくなりました。