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2003年からの読書日記

街の灯 (文春文庫)作者: 北村薫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/05/01メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 43回この商品を含むブログ (136件) を見る

『街の灯』『玻璃の天』『鷺と雪』で完結した三部作の第一作目です。

舞台は昭和初期の東京。
帝都という言葉が何度も登場しますが、この響きだけで昭和の香りがします。


主人公の花村英子は上流家庭に生まれたお嬢様で贅沢な暮らしをしています。
英子はもちろん、その周りの人達の話す言葉や立ち居振る舞いは現代に生きる私には想像もつかない別世界。
実際には知らないはずなのになんとも懐かしいような気分・・・こんな時代もあったんですね。


花村家に女性運転手として別宮みつ子がやってきます。
英子は小説『虚栄の市』のヒロインにちなみ彼女をベッキーさんと呼ぶようになります。
ベッキーさんは抜擢されただけあって、運転手としてはもちろん、剣術も男性顔負け、拳銃の腕も確かで博識というスーパーウーマンなのです。
英子はベッキーさんの言動から色々考えるようになり心も成長していきます。


「虚栄の市」「銀座八丁」「街の灯」どれも面白かったです。
英子が探偵になって謎を解くんですが、頭の切れるベッキーさんは先に答えが分かっているんでしょうね。


叔父が言うように英子はもともと「疑問を見つける才」や「気づく心」があったんでしょう。
それがベッキーさんとの出会いで開花したんだと思います。


裕福で安穏としている自分の立場を冷静に見つめている英子。
何もできないとしても立場も環境も違う人達や暮らしに思いを馳せることができるようになったというのはそれだけで違うと思います。


謎だらけのベッキーさんについても興味津々。
続編を読んでいくうちにだんだん分かってくるのでしょうか?
とても楽しみです。



貫井徳郎さんが解説でも書かれていましたが、マニアならニヤリとする場面がいくつかあるとのこと。
私は全然分かりませんでしたが、『虚栄の市』や江戸川乱歩エラリー・クイーンの作品、「街の灯」をじっくり楽しみたいと思いました。


「円紫さんと私」シリーズや「覆面作家」シリーズもいつかぜひチェックしたいです。