はぴの本棚

2003年からの読書日記

ハーブガーデン (物語の王国 10)作者: 草野たき,北見葉胡出版社/メーカー: 岩崎書店発売日: 2009/10/23メディア: 単行本 クリック: 27回この商品を含むブログ (5件) を見る

草野たきさんの作品はだいぶ前に『ハーフ』を読んで以来でしたが、やっぱり好きだと実感。
でも好きな反面、読んでいてすごく痛いです。

全く一緒ではなくても自分の子どもの頃を思い出させるからでしょうか?
そして母親になった自分が子どもに主人公達のような思いをさせていないかハッとさせられるからでしょうか?


主人公は小学5年生の由美。
母親が「子どもなんて仕事の邪魔でしかない」という電話の言葉を聞いてしまってからは嫌われないよう自分の気持ちを言わないでいました。
そんな時出会った憧れのモデルそっくりな中学生綾芽。
彼女に連れて行かれたハーブガーデンに日々通い始めます。
友達との付き合いもしんどい、家でもいい子を演じ続けなきゃいけない。
由美のエネルギーは切れかけていたんでしょうね。


由美のようなことは誰にもあるのかもしれないし、皆通り過ぎる道かもしれない。
由美の想像力がたくましすぎて母親の電話の内容を勝手に勘違いしてしまったというのもあるけれど・・・
綾芽も花蓮ちゃんもすみれさんも、由美以外の多くの登場人物が皆それぞれ生き辛さを抱えていて読んでいて切なくなりました。


ハーブガーデンが唯一の居場所になったけれど本当は居心地が悪く癒されるなんてことはなく、すみれさんが言うように由美はハーブガーデンで待っていたんですね。
色々あったけれど母親の本当の気持ちが分かったこと、花蓮ちゃんと本音で話すことができ心が通じ合えたのもよかったです。



>「だって、花や草や木がどんなにすばらしくても、ひとにはかなわないもの」

すみれさんの言葉が印象的です。


自然の力ってもちろん大きいとは思うけれどやっぱり人は人を求めるのかもしれません。
傷つくこともいっぱいあるし、逆に傷つけてしまって後悔することもある。
でもやっぱり人を好きになりたいし、自分が大切に思っている人に好きになってもらいたいんじゃないかな?
そんなことを思いながら本を閉じました。