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2003年からの読書日記

久生十蘭短篇選 (岩波文庫)作者: 久生十蘭,川崎賢子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/05/15メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 35回この商品を含むブログ (41件) を見る


あらすじを「BOOK」データベースより引用させてもらいます。

現役の作家のなかにも熱狂的なファンの少なくない、鬼才、久生十蘭の精粋を、おもに戦後に発表された短篇から厳選。
世界短篇小説コンクールで第一席を獲得した「母子像」、幻想性豊かな「黄泉から」、戦争の記憶が鮮明な「蝶の絵」「復活祭」など、巧緻な構成と密度の高さが鮮烈な印象を残す全15篇。



著者の名前からして難しそうで敷居の高い印象でしたが、不良で鳴らしていたというのは意外。
バラエティ豊かで想像以上に読みやすかったです。
時代背景もあって戦争ものが多かったですが、他にも色々な種類の引き出しがある作家ですね。
ジュウラニアン!がいるのも分かる気がしました。



好みだったのは「予言」「黒い手帳」「雪間」。
どういう結末になるのかハラハラドキドキしながら楽しめました。


声高に書かれている訳ではないんですが、死や戦争が登場人物達に強く影響していることが文章の端々から感じられました。
「蝶の絵」「母子像」は中でも印象に残っています。


他にもかわいらしいタイトルから全く想像できない内容だった「白雪姫」、 電話の一人語りで最後まで引っ張り著者の巧さを感じさせた「猪鹿蝶」など、どれも粒ぞろい。


「無月物語」はチェンチ一族の史実を下敷きにしていたとのこと。
>十六世紀末のローマで、暴力と性的放縦をほしいままにした富裕な貴族フランシスコ・チェンチの娘ベアトリーチェが、父親による監禁、性的虐待、暴力に耐えかね、父を殺害、それが露見して処刑されたという史実である。

全く知らず和のオリジナルかアレンジ物だとばかり思って読んだので驚きました。


久生十蘭さん、堪能しました。
機会を見つけて短篇以外の作品も挑戦してみたいです。