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2003年からの読書日記

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)作者: シュペルヴィエル,永田千奈出版社/メーカー: 光文社発売日: 2006/10/12メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 38回この商品を含むブログ (82件) を見る

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著者が詩人ということもあるのでしょうが、どの短編も幻想的で美しい雰囲気。
だからより一層、静けさや孤独を感じるようにも思いました。


最初の「海に住む少女」からあっという間に魅了されてしまいました。
大海原に浮かんでは消える町・・・そこに暮らす謎めいた少女の秘密が最後に分かるんですが、人の強すぎる思いって不幸にもなるんだとハッとさせられました。


他にも「セーヌ河の名なし娘」「バイオリンの声の少女」など少女を主人公にした短編が特に印象に残っています。


また「飼葉桶を囲む牛とロバ」「ノアの箱舟」など聖書を題材にした短編も(聖書は全く詳しくないのですが)興味深く読みました。


訳者あとがきでシュペルヴィエルの魅力を「フランス版宮沢賢治」と未読の人に紹介したと書いてありましたが、「詩人で」「童話や小説も書き」「だが、その童話も必ずしも子供むけとは言えず」「文豪と並び称される大作家ではないが」「みなに愛される作品を残している」。
こう並べられるとたしかに共通している部分が多いと思いました。


著者の両親はフランス人なんですが、生まれたのはウルグアイ
両親が幼い頃亡くなり、祖母や伯父夫婦に育てられたとのこと。


>生みの親と育ての親、ウルグアイとフランス。彼の作品に感じられる複眼的な視点は、こうして生まれたのではないだろうか。

親と国、自分の根幹となる部分が2つにまたがっているというのはどっちつかずの気持ちにもなっただろうし、不安定だったろうと想像できます。
作品にもどことなく表れているような印象です。
やっぱり大きな影響があったのだと思いました。


今回は光文社の古典新訳文庫でしたが、他の訳も色々出ているようなので機会を見つけて読んでみたいです。