はぴの本棚

2003年からの読書日記

マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)作者: 池澤夏樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1996/05/29メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 12回この商品を含むブログ (38件) を見る

初、池澤夏樹さん。
これまで読んだことのない雰囲気の小説を楽しめました。


人口約7万人ほどの小さな南洋の島国ナビダード民主共和国。
そこを治める大統領マシアス・ギリが失脚するまでを描いた小説・・・と聞くとお堅い政治ものといった印象ですが、一筋縄ではいかないスケールの大きい物語でした。


政治には疎い私ですが、使い走りの少年だったマシアス・ギリが大統領に昇りつめていく過程や、日本はじめ周りの国との駆け引きなどを読むのは意外と面白く退屈しませんでした。
政治のことが中心とはいえ、突拍子もない出来事があちこちにちりばめられていて独特の魅力があります。
観光バスが自分の意思で?突然失踪したり、ごく自然に現れる亡霊(笑)、魅力的な神事があったりと、物語が現実と幻想の間を自在に行き来する感じも心地よかったです。


バルタサール、ガスパル、少し離れた場所にあるメルチョール。
ナビダード諸島はこれら大きな3つの島と群島から成るのですが、人口も少なく裕福でもないメルチョール島が他二つの島を精神的に導いているというのも興味深かったです。
法的拘束力を持たないメルチョールの長老会議の決定が最終的にはマシアス・ギリを失脚に追い込むというのが印象的でした。


大統領が最後にした行動はあれしか方法がなかったのかもしれないとはいえ、潔かったもののちょっと寂しかったです。
でも、この物語が全部ケッチとヨールの想像だったら・・・あぁ、やられた!と思いました。