はぴの本棚

2003年からの読書日記

そのぬくもりはきえない作者: 岩瀬成子出版社/メーカー: 偕成社発売日: 2007/11/01メディア: 単行本 クリック: 21回この商品を含むブログ (13件) を見る

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また気になる作家さんに出会ってしまいました!
あちこちで岩瀬成子さんの本の感想を見ていたので、ずっと読みたいと思っていたんです。
この作品は私の好きな酒井駒子さんが表紙だし^^
読んでみて期待通り、いや期待以上でした。

お名前は「いわせじょうこ」さんと読むそうです。


主人公の波は小学4年生。両親は離婚、母親と兄と暮らしています。
母はブティックを経営していて、ミシンも料理もおやつ作りも上手でおしゃれ、何でもこなす完璧な人って感じです。
波は塾や絵の教室、ソフトボールに通っていてけっこう忙しい毎日。
でも勉強にはなかなかついていけないし、運動も苦手っぽい。
習い事には母の意向がかなり影響しているようで、自分が本当にやりたいのか分からない。
携帯からは母からのメールが頻繁に届き、これもまた監視されているようで窮屈な感じです。


波は絵の教室で1つ年上の真麻ちゃんと知り合いますが、彼女は波とは全然違うタイプ。
真麻ちゃんに頼まれ高島さん家の犬ハルを散歩させる役目をすることになります。
そして、波が出会った高島さん家にいる不思議な男の子朝夫くん。
なぜか波にしか見えないらしいのです。
波の世界が広がり、少しずつ変わっていきます。


子どもは親の思いになんとか応えたいと思う、笑顔を見たいし、悲しませたくないと思う・・・
自分が子どもの頃を振り返ってもそういう時期がありました。
習い事をやめたくてもなかなか言い出せなかった気持ちや、嫌々通っていたことなどを久々に思い出しました。
だから波の気持ちは本当によく分かる!
でも成長していくにつれ波のお兄さんのように、親の期待に何でも応えられないことが分かり、自分の意見がちゃんと言えるようになっていくのだと思います。


一方、自分が母親になったからか波のお母さんのこともなんとなく分かるんです。
なるべくなら失敗させたくない、色々な経験をさせてやりたい、友達に恵まれて欲しい・・・など。
親が見守っていること、期待もたしかに必要だけど、それが愛情からきていることとはいえ過剰になるのは怖いと感じました。

子どもが自分で考えられなくなってしまうし、知らず知らずのうちに窮屈にさせてしまうんですね。
波が押さえつけられたまま成長していくんじゃなくて本当によかったです。


携帯電話を持たせることについても考えてしまいました。
特に今の時代、子どものことが心配なのはもちろん、自分の安心のため携帯を持たせるんでしょう。
うちも将来子どもに携帯電話を与える時期がやってきそうですが、よく考えないといけないと思いました。

でも、子どもの世界は親が考えている以上に広いし監視できないものなんですよね。
いくら親でも子どもの全てを把握しておくことはできないし、自分自身の世界や秘密の部分ってけっこう大事だと思います。


我が子、特に娘だと同性だから切り離して考えるのが難しいのかもしれないけれど、やっぱり親と子は別の人間、これは常に心に留めておかないといけないのだと思いました。
お母さんが最後で変わろうとしている姿が見られたのもよかったです。ホッとしました。

私にとってかなり心を揺さぶられる作品になりました。
今この時期に読めてよかったです。