はぴの本棚

2003年からの読書日記

風が強く吹いている作者: 三浦しをん出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/09/21メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 342回この商品を含むブログ (399件) を見る

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夫の実家では、毎年のように箱根駅伝を見るのが恒例行事になってます。
運動は苦手な私ですが見るのは好きなので、それ以来駅伝に少しずつ興味を持つようになりました。
そんな時にこの作品!駅伝シーズンには間に合いませんでしたが、やっと読むことができました。


読んでいて何度も涙が出てしまいました。
ポロポロという感じじゃなくてダーダーと(笑)
メンバーそれぞれが自分の実力の限りを尽くして頑張る姿に打たれました。
陸上を始めたばかりの王子の頑張り、体調が悪くても必死で走る神童の強さ、古傷を抱えたハイジの力走にも圧倒されました。


ほとんど素人といっていいほどの竹青荘の住人達が駅伝を目指す?
実際ならありえない話だと思います。
でも読んでいるうちに実現できるのかもしれないと思えるようになるのが不思議でした。

住人達はハイジに騙された感じで駅伝に出場するための練習を嫌々始めることになります。
陸上競技初心者もけっこういるし、ブランクが開いている者もいるメンバーの面々。
途中で投げ出さなかったのはもちろん寮の仲間との結束もあったし、メンバーそれぞれの個性に合ったきめ細かい指導をしてくれるハイジみたいな者がいたことも大きいけれど、やっぱり皆走ることに魅力を感じたのでしょうね。


走は竹青荘で過ごした1年で大きく変わったと思います。
走りが磨かれたことはもちろん、本当の意味で「強い」ということを考えることで精神的にも成長したようです。

仲間がいても走る時は一人、結局孤独な戦いなのかもしれませんが、駅伝は団体競技の側面も大きいと思います。
次の人にたすきをつなぐことは重い責任だけれど、仲間との結びつきが強いのが見ている者にも伝わってきて魅力があるんでしょうね。
そしてもちろん応援している大勢の人達とのつながりも。


駅伝についての色々な知識も得ることができてよかったです。
本番で走るのは10人だけれど登録できる人数は14人だということ。
エントリーの仕組み、駅伝が「駅馬伝馬」制から採られた名前ということ。
ランナーズハイとは別のゾーンという境地があるというのも初めて知りました。
来年からまた駅伝を見るのが楽しみになりました。


三浦しをんさんの小説を読むのは『まほろ駅前多田便利軒』以来2作目。
前回も感じたのですが、しをん作品の登場人物はなぜか実際の人間というより、漫画やドラマの主人公のように思えてしまうことが多いです。
もちろんリアルなんだけど、登場人物それぞれの性格やあだ名が独特だからかな?
最初はそれが少し気になりましたが、読み進めるうちに物語に夢中になってしまいました。
エッセイは爆笑してしまう箇所がたくさんありましたが、小説でも面白い場面がいくつかあって笑ってしまうのは共通ですね。
これからもしをんさんの小説を追いかけていきたいと思います。