はぴの本棚

2003年からの読書日記

冬の龍 (福音館創作童話シリーズ)作者: 藤江じゅん,GEN出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 2006/10/20メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見る

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児童書です。
ちょっと甘いかなと思ったけれど、九月館の雰囲気がなんともいえず好きで星4つにしました。
主人公は九月館で下宿する小学6年生のシゲル。
母は早くに亡くなり、父が学生の頃お世話になっていた九月館で暮らしていたのですが、仕事を見つけるために故郷へ戻ってしまい、しばらく離れ離れの生活が続いています。
そんなシゲルはとってもいい子。
下宿のおばさんの買い物の手伝いもよくします。
父と離れている生活に不安を覚えたり、自分の気持ちを押さえ込んで我慢している部分もあるように思えましたが、やっぱり優しくて素敵な子です。


クラスの女子と言い合いになったせいで夜中に友達二人と肝試しをすることになってしまったシゲルたち三人。
南蔵院の前で写真を撮っていると不思議な男の人に出会います。
その人は小槻二郎といいちょうど九月館を探していて・・・


現代の子ども達が過去に失われた幻の雷の玉を探すという設定はとても面白いと思ったんですが、大晦日までに見つけて龍に返さないと大変なことになるにもかかわらず、いまいち切迫感が感じられませんでした。
子ども達もどこかゲーム感覚のような雰囲気が最後まであったようだし、当の二郎さんも焦っている感じがしない。
過去の伝説の玉が自分達の暮らす町のどこかにあるという話を完全に信じられない気持ちも分かるんですが・・・


そして残念だと思ったのは後半強引なくらい一気に話が進んでしまったこと。
一陽来復」で四章に分かれているんですが、最後の復の章が本当に短い!
晦日直前に皆が次々と風邪をひいて寝込んでいるうちに問題が解決してしまったのはもったいない気がしました。


でも主人公のシゲルや彼の友達の雄治や哲には好感が持てたし、九月館に暮らす人々も魅力的でした。
そのせいか管理人のおばさんはじめ、坂井さん、栗田さん、五十嵐さんらの方が、雷の玉探しより気になってしまった感じです。
シゲルが雷の玉探しをきっかけに顔見知り程度だった九月館の住人らと親しくなっていく場面もよかったです。


図書館司書、出版社、古書店、背取師(初めて知りました!)など本に関する職業がたくさん出てきたのも本好きにはたまらなくてよかったです。
坂井さんの出版社、今度はうまくいって欲しいなと思います。

藤江じゅんさんの作品は初めてでしたが、また読んでみたくなりました。