はぴの本棚

2003年からの読書日記

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2007年に出された文庫本サイズのフリーペーパーです。
編集協力が岩波書店スタジオジブリなので映画の宣伝も兼ねてるんでしょうね。
無料ですがけっこう内容も濃く、楽しめました。

まず知らなかったのはアーシュラ・K・ル=グウィンさんの父が文化人類学者で母が作家だったということ。
両親の影響を強く受けて作家になったのだなと思いました。
文化人類学といえば、上橋菜穂子さんも共通する学問。
本書には上橋さんからの文章もありましたが、なんだかつながりを感じてしまいました。


そして、特に興味深かったのは訳者の清水真砂子さんのインタビュー記事。
清水さんから見たアーシュラ・K・ル=グウィンさんの印象を述べたところがあるんですが、テナーが彼女の自画像的なものじゃないかという気がするという部分・・・なるほどと思いました。
シリーズの後半でテナーが特に印象深かったのは、著者の姿が自然と反映されていたのかも。


>すぐれた文学というのは線じゃなくて面なんですよね。

この言葉も印象的でした。

>例えばストーリーを追うだけで終わってしまう文学は決してすぐれた文学ではない。いい文学というのはほんとうに丁寧に日常のささいなことを書いているから、線ではなく面を味わいながら読む。いい作品はその面が分厚くて、よく見るとでこぼこがいっぱいあって、ひだも無数にある。そういう味わい深い面になっているんじゃないかと思いますね。

これは本当にそうだなと思いました。
もちろんゲド戦記もそうだし、何度も読み返したいと思っている作品は豊かで味わい深い面の部分がたくさんあるような気がします。


臨床心理学者である河合隼雄さんのゲド戦記論もとても興味深かったです。
影との戦い』が出版されてすぐくらいの頃から注目されていたのにもびっくり。
ゲド戦記は臨床心理学者の目から見ても魅力的なものがたくさん詰まった物語だったのだと思いました。


映画は批判的な意見をけっこう耳にしていたので結局見ないままでしたが、やっぱり見たいと思いました。
このフリーペーパーはもちろんジブリが協力しているので批判的なことは書いていないんですが、やっぱり面白そう。
本とは別物だということをしっかり頭に入れて見てみたいです。