はぴの本棚

2003年からの読書日記

ゲド戦記外伝作者: アーシュラ・K・ル=グウィン,ディビット・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/05/28メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (57件) を見る

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ゲド戦記の旅も残すところあと2冊となりました。
今回迷ったのは読む順番。
邦訳の刊行順だと『アースシーの風』→『外伝』なのですが、原書では『外伝』が先に出版されたのでどうしようかと考えていました。
『外伝』のまえがきをちらっと読むと『帰還』と『アースシーの風』の橋渡しをする物語も入っているとのこと。
ときわさんからも『アースシーの風』を読むと終わった感じがすると聞いていたので『外伝』を先に読みました。

結果、やっぱりこの順番で読めてよかったと思いました。
この本には5つの作品が収められていますが、まさに粒ぞろい!


「カワウソ」
「ダークローズとダイヤモンド」
「地の骨」
「湿原で」
「トンボ」


どれも好きでしたが特に「カワウソ」「地の骨」「トンボ」が印象的でした。
「カワウソ」では謎めいた印象のあった門番の秘密が少し分かってうれしくなりました。


「地の骨」では師匠のオジオンの若い頃が舞台で彼の師匠が登場します。
既刊でちらっと触れられていた大地震
オジオンと師匠がどうやって鎮め、市を救ったのかがよく分かりました。
最後の場面では涙ぐみそうになった自分に驚きましたが・・・


「トンボ」では命名の儀式や名付けの重要さが書かれていて名前について色々考えました。
アースシーほどではなくても現在も名前は重要なもの。

>「〜頭で考えてわかるというものではないんだよ。やってくるのを待つしかない。」
という命名する魔女バラの言葉は今も通じるように思いました。


あと女性についての問題も考えさせられました。
魔法使いの世界では特に女性が軽視されていて腹立たしさも覚えるくらいでした。
女性の立場が最終巻では少しは向上するのでしょうか?
この流れだとトンボが『アースシーの風』に再登場しそうだし、ますます期待が膨らみます。


とてもよかったのがまえがきと最後のアースシー解説。
読んでいて著者が真剣に物語と向き合っている姿勢が伝わってきて本当に素晴らしかったです。


アースシーの世界が本当に実在していたんじゃないかと思わされるほどの完成度の高さ。
著者が練りに練ってこの物語世界を作ってきたんだと分かりました。