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2003年からの読書日記

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須賀さんのエッセイは2冊目ですが、(初は『ミラノ霧の風景』)こちらの方がより好みでした。
美しい日本語は相変わらずで、より読みやすく文章が練られている印象です。

タイトルも素敵で「ヒヤシンスの記憶」「雨のなかを走る男たち」「重い山仕事のあとみたいに」など、読んだだけで想像が広がってうっとりしてしまいます。

テーマは今回、ほぼ「家族」にくくられていました。
亡き夫のペッピーノのこと、しゅうとめ、義父、義弟家族のことなど著者に近い人たちのことがたくさん語られています。


須賀さんのエッセイはただのエッセイではなくて、小説のような雰囲気も漂って美しく魅力がある文章です。

最後の湯川豊さんの言葉を借りると
>〜エッセイという枠のなかにみごとな「小説」がはらまれているのだ。

まさにぴったり!そんな感じだなと思いました。
ただ当時を回想して書いているだけではないんですよね。
さらっと書いている雰囲気なのに実は練りに練られている・・・
須賀さんのすごさを感じました。


好きだなと思う文章もあちこちにたくさんありました。

旅をする時の自分の状態を表現した部分
>「旅は、私にとって、それまでのじぶんが溶け去って、つぎのじぶんに変容するまでのからっぽな移行の時間でしかないのかもしれない。」

自分がいなかった間に起こった出来事を話してもらうことについて
>「〜過ぎさった時間をたぐりよせる。
ながいこと使ってなかった時計をあわせるように。」

亡くなったナタリアに対しての言葉
>「ずっと耳底にあった音楽がひとつ消えたような、見なれた木立の一本がふいの大風に倒れた気がした。」

本当に美しい、心に響く文章たち。
手もとに大切に置いておき時々読み返したくなるエッセイだと思いました。

亡くなる前には初の小説の準備もされていたとのこと。
須賀さんの小説もぜひ読んでみたかったです。

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ミワ > 須賀さん!きのうまで淡路島旅行に行っていたのですが、何を持って行こうかすごく迷って、迷ったときの須賀さん頼みで『遠い朝の本たち』を持って行ったので、トントンさんが須賀さんの本をアップされていてうれしくなりました。
わたしもこの本、とても好きです。湯川さんの言葉はほんとにぴったりですよね。須賀さんの小説、読みたかったなあ。
(2006/08/31 13:24)
澪 > トントンさん、こんにちは。実は近所の図書館に須賀敦子全集が置いてありまして、未定稿の小説「アルザスの曲りくねった道」の序章が載っている第8巻を借りてきました。「ユリシーズの瞳」という映画に漠然と構想を得たものだそうです。「塩狩峠」読み終えたらゆっくり読んでみようとわくわくしています。 (2006/08/31 16:23)
トントン > ミワさん、こんにちは♪淡路島には須賀さんの本がお供したんですね^^私もなんだかうれしいです。本当に湯川さんの言葉はぴったりだと思いました。小説もぜひ読みたかったですよね!『遠い朝の本たち』私もまた読んでみますね。
>澪さん、こんにちは♪須賀敦子さんの全集が出てるんですね。未定稿の小説、そうそうこのタイトルでした!澪さんの感想楽しみに待ってますね。私は図書館に行っても全集の棚は素通り(笑)だったのでたまにはチェックしてみようと思いました。 (2006/09/01 15:02)
れんれん > 本当に須賀さんの日本語表現には感動します。丁寧で深くて切なくて。私も全集にまではなかなか手が届かなかったのですが、「アルザスの曲りくねった道」は8巻に収録されているのですね。今度是非借りたいです。「遠い朝の本たち」も未読です。読みたい本がいっぱいです。。。 (2006/09/06 15:01)
トントン > れんれんさん、本当に須賀さんの日本語ってきれいですよね。全集の8巻は私もいつか探して読みたいと思います。れんれんさんと同じく読みたい本がますます増えていってます・・・ (2006/09/06 16:00)