はぴの本棚

2003年からの読書日記

きいろいゾウ作者: 西加奈子出版社/メーカー: 小学館発売日: 2006/02/28メディア: 単行本 クリック: 40回この商品を含むブログ (70件) を見る

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ちらも初めて読む作家さん。
イラン・テヘラン市生まれで大阪育ちというのにまずびっくり。
そして自分とかなり近い年齢だったので、重なる部分がなんとなく多いような・・・
関西弁も心地よく、「どんじゃら」「肝油ドロップ」など文章の中にも懐かしい言葉がたくさん出てきました。
でも、人によっては好き嫌いがはっきり分かれるかもしれないと思いました。

登場人物も個性的で夫婦の名前が「ムコ」と「ツマ」。
東京から田舎に引っ越してきて暮らしています。
ムコさんは小説家、坊主頭で体には鳥の刺青。
ツマは彼の奥さんで幼い頃心臓が弱く入院していた経験あり、田舎に来てから動物や植物の声が聞こえたり、見えないものが見えたりするんです。
一風変わったこの夫婦の暮らしが淡々と綴られていて、ひょうひょうとした感じの文章で物語が続いているんですが、途中から雰囲気が変わってきます。
仲良し夫婦だった二人のはずなのに、少しずつ歯車が狂い始めて・・・
結局これは夫婦の愛の物語になってたんですね。
結末も暗い感じにはならなかったのでホッとしました。

他の登場人物や動物たちも個性豊かで面白かったんですが、私が気に入ったのは駒井さんの孫、大地くん。
彼の存在がすごくよかったと思いました。

夫婦は不思議というような言葉がたびたび出てきましたが、他人だった二人が一緒になって新しい家族を作るって本当に不思議。
子どもは二人の分身だけど夫婦は結局他人からのスタートなんですもんね。
自分のことを知るのも難しいのに、まして他人ならお互いのことを分かっているようで分かっていないのかも。
他人同士のスタートだからこそ年月を重ねるほどお互いを思いやる気持ちを持ち続けていかないとなかなかうまくいかないのでしょうね。
私もこれを読んでちょっと自分を反省したりして(笑)

評価は3か迷いましたが、きいろいゾウの物語がすごくかわいかったので4にしました。
この小説をきっかけに絵本にもなったみたいです。
読んでみたいなと思いました。