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2003年からの読書日記

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なんとか年内に読むことができました。
前巻でかなり圧倒されましたが、これはそれ以上だったかもしれません。
かなり分厚い上下巻だったということもあり、読了後は自然とほーっとため息が出ていました。
物語はまだ続いている感じがするからでしょうか?
読み終わって満足というより、やり切れなさというのか、色々な思いがごちゃ混ぜになって、まだもやもやした気持ちが残っている感じです。

「風紋」から7年後の被害者、加害者側の物語です。
被害者の娘、真裕子の章と加害者の息子である大輔の章が入れ替わりで語られます。
真裕子の章は最初からただただ救われて欲しいという思いだけで読んでいました。
事件の傷は7年後も根深く残っていて、ハラハラする部分もたくさんありましたが、建部や俊平の存在で少しずつ本来の明るさを取り戻していく様子にはほっとしました。

でも、殺された母親は決して戻ってくることはない・・・
事件の傷は少しずつ薄れていくことはあっても消えない。
父や姉より現実から目をそらさない強さのある真裕子ですが、その強さや正直さは脆さにもつながると言った建部の言葉。
ことあるごとに「期待しない」「望むから傷つく」と心に刻もうとする真裕子が痛々しく思えたけれど、彼女をここまで理解してくれる人が側にいてくれて、本当に救われただろうし、よかったと思いました。

逆に、大輔の章はあまりにも重く辛いことばかりで、読んでいてどんどん気持ちが沈んでいきました。
事件に直接は関係していない大輔なのに、次第に行き場を失い、絶望していく様子が痛々しくてなりませんでした。
どうして、どうして・・・という思いばかりでした。
たしかに香織も被害者といえるのかもしれないし、生きるのに必死だったのかもしれないけれど、母親としてもっと我が子を守ってあげて欲しかったです。
大輔と絵里は事件の余波を受けた大きな被害者だと思います。
事件の起こる前までは何不自由なく愛情を注がれていた存在だったはずなのに・・・
親でなくても誰かが彼らの希望の光になれなかったのか?救えなかったのか?という気持ちばかりが残ります。

最後に印象に残った建部の言葉を引用しておきます。
「結局は年月と人との出会いだけが、人々を辛うじて立ち上がらせ、再び歩ませることの出来る、最善の特効薬なのではないかという気がしてくる。」

本プロでこの本を知り、深く心に残る読書ができました。
分量も多く、かなり重い内容ですが、未読の人にはぜひ読んでもらいたい作品です。

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あしか > 事件そのものが突飛でも劇的でもないシンプルなものなのに(という言い方も“なん”ですが)、それにまつわる人々がこんな風に苦しんでいくんだよなという描写力がすごい作品ですよね。 (2006/01/01 14:43)
ゆんゆん > 私もどうしてどうしてと思いながら最後は字を追うのに必死でした。香織という母親の存在が許せず、でももし自分だったらとどうなるだろうと不安になったり、そうならないと強く思ったり・・・「母親」というものを深く考えました。 (2006/01/04 15:13)
(2006/01/04 15:53)
トントン > 自分のレスを書き直そうと思ったらゆんゆんさんのまで一度消えてしまいました。ごめんなさい><念のため残しておいたレスをコピーして再投稿させてもらいました。
>あしかさん、 一つの事件でこんなにたくさんの人が苦しむんですよね。この本はフィクションだけど、真裕子をはじめ登場人物の苦しみがすごくリアルに伝わってきました。重い内容だけど読んでよかったと思いました。
>ゆんゆんさん、香織の変化はものすごかったですね。母親としてもっとなんとかできなかったのか?と私も強く思いました。でも、もし自分が同じ立場だったら・・・と思うと不安になりますよね。深い深い読書ができました。 (2006/01/04 16:00)
kanakana > 厚くても、引き込まれて一気読みしちゃう本ですよね。真裕子は建部や俊平がいてくれて本当に良かったです。真裕子に感情移入していただけにほっとしました。でも、大輔はあまりにも可哀想過ぎる。母親の香織も大輔の人生においては加害者なのでは。。。と思いました。(自分が未婚で子どももいないので言えるのかもしれません。。。) (2006/01/05 18:37)
ゆきみ大福 > 読み終わり本を閉じた後の、行き場のない憤りを今また思い出しました。「風紋」の続きというので、真裕子が立ち直っていて欲しいとそれだけ思って開いてみれば、あの大輔の変わりよう!!ショックでショックで読むのが止められなくなりました。本プロで知ることがなければ、あの分量に怯んでいました。私も未読の人にはぜひ読んでもらいたいです。 (2006/01/06 00:12)
butti > ブラウン管の先に見る一つの事件の裏には、その関係者の肉親と言うだけで、これほどまでに傷つき、他人を信じられなくなりさらには世間から後ろ指を差される”事件自身とは無関係な”人たちがいる事に、そして、きっとそれはこの話の中だけでなく、現実なんだろうと言うことに、本当に強い悲しみを覚えました。「その時」中学生だった真裕子は、本当に本当に深い傷を負ったのだと思います。だけど、「その時」を知り、そして真裕子を支えようとしてくれた建部、そして俊平の存在が光になりました。だけど、大輔は。「その時」は勿論、今もまだ小学生である幼い兄妹の支えとなるべき母親の所業は。
ラストの衝撃は、きっとこの先読書をしていく上でも、忘れられないものになると思います。 (2006/01/06 15:51)
トントン > kanakanaさん、こんばんは♪分厚いのに読み始めたら気になってやめられないんですよね。真裕子には建部や俊平の存在が救いになってよかったけれど、大輔はかわいそうで読むのが辛かったですよね。kanakanaさんのおっしゃるように香織は被害者であったけれど、大輔にとっては加害者だと私も思いました。母親としてもう少しなんとかできなかったのかなあってそればかり考えてしまいます。
>ゆきみ大福さん、行き場のない憤りを思い出させちゃいましたか・・・私も「風紋」を読み終わってから次を読むまでの間、真裕子が救われて欲しいと思っていたのですが、こっちを読み始めると大輔のことが気になって気になって大変でした。最初からショックだったし、最後も辛かったですよね。本プロで紹介されているのを目にしなければ私も読まなかっただろう本ですが、手に取れて本当によかったです。読み始めるのに覚悟がいるかもしれないけれど、未読の人にはぜひおすすめしたいですね。
>buttiさん、一つの事件でこんなにたくさん影響を受ける人たちがいるんですよね・・・現実でも毎日のように事件の報道は流れているから、余波を受けて辛い思いをしている人たちがどれほどいるんでしょう?考えると怖いくらいです。真裕子はとても苦しい思いをしたけれど建部と俊平がいてくれて本当によかったですよね。しかし、大輔はあまりにもかわいそう・・・ラストは悲しくてやりきれなさばかり残りました。私もずっと忘れられない物語になりました。 (2006/01/06 21:33)
さくら > 風紋と同じように、一つの事件の加害者の家族も被害者の家族も同じように被害者になるんですよね。この二作を読むとただぼ〜っとテレビで毎日のように流れるニュースを見ていられず、他人事でなく感じられ心が更に痛みます。
「風紋」「晩鐘」は本当に是非たくさんの人に読まれて欲しい作品だと私も思います。
真裕子の幸せがとても嬉しかったです。 (2006/01/06 22:08)
トントン > さくらさん、こんばんは。真裕子の幸せは本当によかったですよね!大輔の章は救いがなかったのでなおさらそう思いました。この本を読んでからは被害者だけでなく加害者の家族のこともすごく気になるようになりました。ひどい事件のニュースが多いから本当に心が痛みますよね。本プロのおかげで「風紋」「晩鐘」に出会うことが出来てよかったです。もっとたくさんの人に読んで欲しいですね。 (2006/01/07 22:28)