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2003年からの読書日記

風紋作者: 乃南アサ出版社/メーカー: 双葉社発売日: 1994/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る

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私が今年の課題図書に決めていた本、なんとか間に合いました。
図書館で借りたのですが、すごい本の傷み方にびっくり。
表紙は新たに貼り替えられているものの、もう茶色く変色しています。
書かれたのは約10年前なのでかなりの人が読んだんでしょうね。
それだけ読み継がれている本なんだと思いました。

読み始めてすぐに圧倒されました!「すごい」の一言です。
これはもっともっと多くの人に読んで欲しいと思いました。
上下2段組みでこんなに分厚い本なのに、一気読み。
読み始めたら続きが気になって仕方なかったです。
主人公達がどうなっていくのか?裁判の結果は?
続けて読みたくて読みたくて・・・どっぷりはまりこんだ数日間でした。

主人公は高校2年生の高浜真裕子。
ある日突然母が殺されてしまいます。
犯人はなんと今は浪人中の姉の担任だった松永で、今も真裕子の通っている学校の教師をしている人でした。
以前から危ういバランスでもっていた家族はバラバラになり、マスコミの報道攻めに合い、神経をすり減らす日々。
母を殺害したのを認めた松永でしたが・・・

加害者と被害者についてまず考えさせられました。
一つの事件が周りの人生をも狂わせてしまう怖さを感じました。
被害者の家族が痛ましいのは当然なんですが、加害者の家族や親類にもかなり大きな影響が及んで、これからの人生、計り知れない影響が出るように思いました。

香織が短期間であれほど変わってしまうなんて驚きました。
夫に裏切られたこともあり、仕方ないのかもしれないけれど、母親としてやっぱり身勝手なんじゃないかと思ってしまいました。
そして子どもたちはどうなってしまうんだろう?とすごく気になります。
これは『晩鐘』できっと語られるんでしょうね。

主人公の真裕子の深い心の傷も読んでいて辛かったです。
「凍った月のような目」と何度も建部に表現されていましたが、読んでいて痛々しくてどうしようもなかったです。
涙壺にどんどん涙がたまっていくところ、気持ちを閉じて何も感じないようにしてしまうところ、他にも色々なところで真裕子に感情移入してしまいました。
真裕子が救われてほしいと願う気持ちでいっぱいになりました。

マスコミ報道のあり方も考えさせられました。
殺人事件の報道は日々目にするので、当たり前といっては言葉が悪いですが、いつの間にか慣れてしまっている自分がいてハッとさせられました。

事件の詳しい報道を知ることができるのはマスコミのおかげだけれど、行き過ぎた取材によって傷ついてる人たちは想像以上にたくさんいるんでしょうね。
どれだけの人が日々心を痛めて生きているんだろうと思うと怖いくらいです。
この本を読んでいる最中にも幼い子が殺される事件が立て続けに起きて、本当に悲しい気持ちになりました。

乃南さんのあとがきからも気迫というか、この本に込めた思いがビシビシ伝わってきました。
本プロで熱心な推進委員さん達がいらっしゃるのもうなずけます。
『晩鐘』も図書館で予約しているので年内に読めるかどうかといったところですが、真裕子たちのその後を見守りたいと思いました。

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ケイ > トントンさん、五つ☆が続いてますね。マスコミ、、多分それも傷になりますよね。過剰ですから。。それにずーっと事件をひきずる当事者たちは。。私も読んでいる気持ちになりました。ドキュメント風で、今生きてる人は誰もが思い当たりそうな、、小説ですね。
下の荻原さんもですが、、トントンさんの本読んでみたい本が多いなあ。いつかは。と思います。 (2005/12/04 15:18)
ゆきみ大福 > 読まれましたね。お疲れ様です。私も「風紋」「晩鐘」は、やり場のない憤りを抱えながら、読むことを止められない濃密な時間になりました。もうただただ真裕子を見守りたい一心で、でも私が出来るのはページを捲ることだけなのだと思いながら・・・。「晩鐘」もまたもの凄いことになっています。トントンさんが年内に「晩鐘」を手にすることを心待ちにしています。こういうパワーのある本はなかなか再読が難しいので、トントンさんの書評・感想で再読したような気分になることが出来ありがたいのです。 (2005/12/04 23:35)
みかん > こんばんわ。お母さんがケイのみかんです。こげぱんのことありがとうございます。みかんも全部そろえたいです。 (2005/12/04 23:49)
butti > トントンさん、推進委員会会員buttiです。風紋をわたしが読んだのは、多分出版してすぐ位だったと思うので、じゃあ、もう10年も前の事になるんですね。乃南さんが「凍える牙」で直木賞を受賞され、興味があってどんなもんかと読んでみました。勿論、「凍える〜」は「音道貴子後援会」(>_<)を作るほど面白かったのですが、その「凍える牙」の書評?の中に「乃南アサは風紋でこそ直木賞をとるべきだった」という一文が。それで手にとってみたんです。分厚い、分厚い一冊を。そして10年の時を経た今でも、真裕子の母が見つかった車の置いてあった工場(でしたっけ?)の駐車場のイメージ、見たこともないけれど、真裕子が一人でずっと待ち続けていた家の中の情景、たくさんのシーンがとても鮮やかに思い出されます。そして、痛すぎるほどの真裕子の思いが。「晩鐘」では、あらゆる角度からの「その後」が語られます。それは、読んでいても辛い事も多いのですが、是非読んでみてください。またトントンさんの感想を楽しみにしています。 (2005/12/05 03:06)
ぱせり > トントンさんが読んでいた重たい本、この本だったんですね。すごい。わたしもいつか読んでみたいです。乃南アサさん、一冊も読んだことがないのですが、この本から入っても大丈夫でしょうか。来年は国内の大人の本(!)を読もうと思っています。本プロで知った気になる本がいっぱいです。 (2005/12/05 09:21)
キイロイトリ > 推進委員さんもいらっしゃる乃南さん、気になる作家さんです。乃名南さんの作品はだいぶ前のものしか読んだことなくって。ミステリーはあまり読まないのですが、おもしろそうですね。 (2005/12/05 12:47)
キイロイトリ > すみません。乃名南さんじゃなくて乃南さんでした〜;^_^A (2005/12/05 12:49)
トントン > 皆さん、たくさんのレスありがとうございます♪
>ケイさん、そうなんです。マスコミもそうだし、周りの人たちの好奇の目とか色々なことが当事者たちの傷になるんだと思いました。この本かなり分厚いんですが、余計な文章は全くないくらいすごいんですよ。ケイさんの感想もいつかぜひ聞きたいです。機会があれば読んでみてくださいね。
>ゆきみ大福さん、やっと読めました。やり場のない憤り・・・私も色々な思いを噛みしめつつ読みました。そうなんですよね。私たちにできるのはページを捲ることだけなんですけど、すごい読書になりました。この巻でかなりの衝撃だったのに『晩鐘』はもの凄いんですか!本当にパワーをかなり使う読書ですよね。心して読みたいと思います。
>みかんさん、こんにちは♪ケイさんのところではお世話になってます。こちらにも遊びに来てくれてどうもありがとう!こげぱんシリーズ、みかんさんも少しずつ集めてるんですね♪私も大好きなんですよ。旅行に行った気分を味わえますよね^^またお話しましょうね。
>butti推進委員さん!読みましたよ。ものすごい衝撃でした。buttiさんはこれを10年くらい前に読まれたんですね。10年経った今でも全然古さを感じさせないのもすごいです。buttiさんは私以上に『晩鐘』が待ち遠しかったんでしょうね。乃南さんの作品をあまり読んでいない私ですが「これが最高傑作にちがいない」って勝手に思っています。『晩鐘』ではその後があらゆる角度から語られるんですね。じっくり読みたいと思います。それに「音道貴子後援会」なるものがありましたか!また機会をみつけて挑戦してみたいです。
>ぱせりさん、はい、この本でした。普段は重たいパワーのいる本は避けている私ですが、これは必ず読もうと決めていたんです。乃南さんの本は私も『涙』しか読んでいないんですが、これは『晩鐘』と前後を間違えなければ大丈夫ですよ。ぱせりさんにもぜひ読んでいただきたいです。
キイロイトリさん、私もミステリーはあまり読まないんですが、これはドキュメンタリーみたいな感じもしてすごく衝撃をうけました。かなり読む前は勇気がいりましたが読んで間違いないと思います。キイロイトリさんの感想もぜひお聞きしたいです。 (2005/12/05 14:31)
ゆんゆん > トントンさん、こんにちは。被害者と加害者の本ってこの本だったのですね!「風紋」は私も色々と考えさせられた本でした。ノンフィクションを読んでいる感じに私はなり、読み終えて心かき乱されました。「晩鐘」の感想も楽しみにしています。分厚くて吃驚されるかもしれませんが、読み出したら止まらないかも・・・ (2005/12/05 15:01)
kanakana > トントンさん、はじめまして♪8年位前に読んだのですが、この本で初めて、遺族の辛さがわかった気がします。特に真裕子が可哀想で。。。彼女の幸せを願いながら読みました。「晩鐘」もぜひ読んでみてくださいね。 (2005/12/05 21:48)
ココ > 私が借りた図書館の本も、かなりボロ……でした。厚さと痛みの激しさから、行く度に目にしながら、なかなか手にしなかったことを、読んでから本当に後悔しました。トントンさんの感想を読んでいて、自分がこの本を読んでいたときの感情がよみがえりました。『晩鐘』、じっくり読んでくださいね!感想を楽しみにしていますから〜。 (2005/12/06 16:46)
トントン > ゆんゆんさん、こんばんは♪ノンフィクションを読んでいる感じ・・・分かります。私も気づいたらそんな気分で読んでいました。この本にどっぷりつかってしまって読み終わってもしばらく放心状態で。『晩鐘』はもっとすごそうですね。頑張って読みたいと思います。
>kanakanaさん、初めまして♪私の勘違いかもしれないけれどお話したことがあったような・・・?これからもよろしくお願いしますね。遺族の辛さ、痛いほど伝わってきましたね。私も真裕子に感情移入して読んだので彼女が救われて、いつか幸せになってほしいなと思って読んでいました。『晩鐘』への期待がどんどん膨らんでいます。
>ココさんの借りた本もボロだったんですね、それだけたくさんの人が衝撃を受けて読んだのでしょうか。私はいつも借りられていたので実物を見たのが今回初だったんですが、ちょっと手にするのに勇気が要るボロさ加減(笑)でした。図書館で新しく購入したら、読むのに躊躇していた人が手に取るかもしれないですよね。興奮状態で書いた私の感想なのに、読んでいたときの感情がよみがえってきたと聞いて、すごくうれしく思いました。ありがとうございます。『晩鐘』年内に読めるかどうかですが、じっくり読みたいと思います。 (2005/12/06 23:40)